「地方分権型」教育と教育行政の課題
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概要
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本論は,前回本紀要42号「教育行政の地方分権」に続くもので,「地方分権一括法」改正(1999年7月)に伴う「地方教育行政法」の新たな分権化の改正内容・条件を踏まえ,各自治体における地域教育改革がそれらをどのように生かし,「教育と教育行政の地方分権」の名にふさわしい改革を進めつつあるかについて,代表的な三つの実践事例-「福島県三春町の教育改革」「川崎の教育改革」「土佐の教育改革」(現地調査も実施)-を取り上げ,そこにおける学校と教育行政の「車の両輪」的制度改革の生成の経過・特徴・意義・課題を具体的に検討したものである。80-90年代以降,国連「地方自治憲章」や「子どもの権利条約」(89年採択)等にも促されて欧米はもとより,わが国でも政府筋の中教審→教育改革国民会議→文部科学省の系列においてもそれなりの「地方分権」化政策が提唱されてはいるが,その諸施策の是非の検討を含めて(拙論『教育自治研究』14号,東海研,01年9月,で検討済み),以上にあげた実践事例から「地方分権型」の教育と教育行政の在り方に関する教訓を引き出すことは,この21世紀の教育学・教育行政学の核心をなす研究課願・改革課題となるものと考えられる。今日,子育て・教育をめぐる状況は困難を極めているが,深いところでは家庭・学校・地域・自治体の教育を担う主体・主人公・教育権者・統治権者は本来子ども・親・教師を含む主権者「住民」でなくてはならないにも拘らず,わが国の場合,そこが政治的・経済的手法や官僚的教育行政によって「支配の対象」にされてきた「逆行の歴史」が大きな原因となっている。従ってそこをどう転換していくかを抜きに,子育て・教育・人間発達の根幹をなす共生的・協同的人間関係を創造・回復していくことは不可能に近い。ところがそれにも拘らず今日の支配的な諸政策・教育政策は,相変わらず「逆行の歴史」に加担する方向から解放されていない(新自由主義・保守主義政策)。子育て・教育・人間発達をいよいよ困難にする原因を逆につくり出しているのが現実である。この現実に対し,その共生的・協同的人間関係の創造・回復を目的とした教育改革が台頭してきている。それが本論で取り上げる実例であり,地方分権の観点からではあるが,その基底には以上のような共生的・協同的人間関係の創造の課題が据えられていることは行論に明らかな通りである。本論は以上のような問題意議から立論されたものであることを付言し本論に入る。
- 2002-03-20
著者
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