地域振興と地方自治体-第3セクタ-と自治体の役割-
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概要
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リゾート開発の特徴の一つは,第3セクターを開発主体としているところが多いことである。民間資本にとっては事業のリスクを分散でき,しかも自治体が加わることによって開発事業に必要な許認可が得られやすいというメリットがある。リゾート法が適用されれば公的な財政支援を受けることができる。自治体にとっても,民間資本が開発に参入してくれれば公費の負担が節約できるうえ,リゾート産業による地域振興を図ることができるとの期待があったためである。しかし,リゾート法の施行後10年を経た現在,全国的に進めれたリゾート開発で成功例として挙げられる地域は皆無といってよい。第3セクター方式で開発事業に加わった地元の自治体は,地方債の発行などによる多額の債務を抱えて苦慮している。第3セクター方式で問題となるのは,自治体の資本出資率が50%以下で事業の予算執行や経営をコントロールできない場合である。民間資本が増資して事業の主導権を取ってしまえば,後は思いどうりの開発ができ自治体の意向や期待は実現しない恐れがある。自治体の参加は最初に開発の許認可を得るためには必要であるが,事業が始まってしまえば民間資本にとって邪魔な存在となってしまうのである。資本の利潤追及の論理に対抗する術を持たない自治体は,リゾート開発によって地域振興どころか地域の衰退をもたらす結果になった責任を,いま住民から問われている。私的資本の利益のために,かけがえのない国民の共有財産である自然環境への破壊行為を容易に許してきた行政官庁の責任は,さらに重大であると言わなければならない。
- 1998-03-20
著者
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