都市景観条例と地域開発-金沢市と函館市の場合-
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概要
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金沢市と函館市の特徴として,両市とも歴史的な街であり,伝統的な建造物を多く持っているという共通性があるが,景観条例の性格と内容にはやや異なるものがある。金沢市の場合は,既存の「伝統環境保存条例」を拡大発展させて,近代都市の景観形成をも目ざした総合的内容の条例となっている。地元財界の要望でつくられた「都市景観懇話会」の提言をもとにまとめられたのが「美しい景観の形成」をめざす新景観条例である。金沢市の景観条例では,近代的都市景観創出区域と伝統環境保存区域の二種類の区域指定がある。しかも実際に指定された区域は,街の中心部においてこの二つが隣接する状態である。景観の統一性を欠く恐れがある。函館市の場合,「函館の歴史的風土を守る会」(市民団体)が景観条例制定のきっかけをつくった。函館市の景観条例の特徴は,地域が西部に限定されていること,そして歴史的景観地域の中で伝統的建造物が集中している地区を文化財保護法に基づく「保存地区」に指定していることである。したがって保存地区内での建築行為などは許可制を定め,違反者には罰則がある。届出制を採る金沢市には違反者への罰則はない。函館市は,マンション対策のため「高度指定地区」を定めたほか,「デザインガイドライン」によって景観形成基準のかなりの具体化・例示化を行なっている。それだけ財産権.べの介入や制限が強められているわけである,.金沢市も函官市も景観形成への市民の協力や積極的参加責務としてうたっているが,景観形成義務を強調する結果,サイン,広告物などの規制によって個人の財産権のみならず,表現の自由等精神活動の自由への制約がおきるおそれもある。統一ある地区環境の保全という目的があるにしろ,市民生活への相当の影響が予測される。本稿は,歴史的伝統がありかつ観光地である金沢と函館の両都市が制定している都市景観形成に関する条例に基づいて,それぞれの都市が掲げる景観形成の内容を検討すると共に,地域の開発と環境の保全に関して,両自治体が基本的にどのような姿勢で対応しているかを明らかにしようと試みるものである。
- 1993-03-11
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