<原著>社会老年学の哲学と思想
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概要
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加齢の哲学や思想と社会老年学の学問性との間には,深い関連性がみられる。本論文では,このような視点に立って,思想という表現のなかに宗教,倫理,規範,価値などを包含して社会老年学の思想性と学問性の緊張関係を問題とした。歴史的,社会的背景を考慮すると,加齢や死に対する人間の態度は変化してきたように思われる。特に近代社会における産業化,都市化にともなって2つの現象が生じた。第1に,加齢と死の管理が行われるようになったことである。高齢者を子どもとその父親,母親あるいは祖父母の家庭介護から切り離し,専門的施設や病院あるいは専門職に委ねるようになった。第2に,エイジズムの問題が大きくなったことである。同時に,若い世代を中心としたエイジレス社会という共同幻想の問題が惹起されるようになった。社会老年学のスタートラインにおいては,高齢者に対する共感とともに予防が大きなテーマであった。しかし,現在の社会老年学においては2つの新しい思想を必要としている.1つはケアのサポート体制の思想であり,2つはポストケアの創出に向けての考え方である。このように,現代の社会老年学は思想としての公平性と学問的厳密性を止揚する必要性に迫られている。
- 川崎医療福祉大学の論文
著者
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