<原著>英国社会福祉学の基礎理念としての残余主義と制度主義
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概要
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米国の社会福祉学者であるウィレンスキーとルボーは, 1958年に社会福祉の発展類型を「残余的(residual)から制度的(institutional)へ」と提示し, 大きな注目を集めた.しかしその後, このパラダイムは残余主義, 制度主義という理論的枠組みとしては, 米国よりもむしろ英国において対概念として取り上げられ, 現在では福祉の発想法の2つとみなされ, かつ定着するようになっている.英国社会福祉学の伝統のなかで, 正面からこれらの概念を最初に取り上げたのは, ティトマスである.ティトマスは, この対概念を操作概念として位置づけ, 社会福祉の歴史概念よりも有用な現実的概念とみなしたのである.残余主義を施しや慈善の奥底に流れるボランティア・スピリットとみると同時に, 制度主義と官僚制との近似性を見い出している.このような把握は, それ以後も継承されているが, 特にピンカーはさらにこの対概念を整序化し, 現実のさまざまな社会福祉事象が, この2つの混合形態であることを踏まえながら, その緊張関係を問題にしている.また, 残余主義は選別主義と親和性が高く, 制度主義は普遍主義と親近性が深いという関連性に言及している.こうして, 近年における英国社会福祉学の精緻化にともない, 残余的モデルは過去の福祉類型だという位置づけは全くなくなり, むしろ生産性という意味が付与されるようになってきている.
- 川崎医療福祉大学の論文
- 1991-10-11
著者
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