老農と経験主義的合理性 : 林遠里と勧農社をめぐる最近の研究に寄せて
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概要
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老農時代を象徴する林遠里と勧農社をめぐる研究は, 最近, 一つのピークに達した.同じ問題領域に関わってきた一人として, これらの研究の意味を検討し, 今後の進め方についての私見を提示した.論者のあいだで, 同じ史料を使いながら相いれない結論が導きだされるなど, 議論に若干の混乱がみられる.その原因を, <林遠里=老農>なる通念への無批判的な追従に求めた.この通念は<老農時代に活躍した人物=老農>なる等式を大前提としている.議論の混乱を解決するためには, この大前提が成立する条件を厳密に規定する必要がある.その条件とは経験主義的合理性の有無である.それに基づいて, 林遠里とその農法を, 厳密な意味での老農でも老農農法でもないと結論づけた.今後の課題として次の二つを提示した.第1に, 厳密な意味での老農とはいえない遠里が, 福岡県を代表する老農を経て全国的な名声を得, ついには明治三老農の一人になってしまう.こうした時代状況の特異性・異常性のより深い解明.第2に, 林遠里をめぐる当時の論争を, この時期, 農法のあり方をめぐる二つの路線の対抗として位置づける.単なる農学レベルにとどまるものではなく, 農法全般の改良・改革をめぐる対抗として把えかえすことによって, その意味がはっきりしてくる.
- 名古屋文理大学短期大学部の論文
- 1998-04-01
名古屋文理大学短期大学部 | 論文
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