テハ条件文の構造と談話的な機能
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
テハ条件文については, これまでタラ, レバなどの条件表現との対比をおこないながら, その構文的, 表現的特徴について, 多くの研究がなされてきたが, 従属節に見られる事態設定の認識と, 主節に展開される叙述内容との関係性, そこから意図される談話的な特徴については, かならずしも体系的記述や一貫した説明がなされてきたわけではない.本稿では, まず「テハ」の発話意図を形成する重要な核として「ハ」の本質において, 他動性, 取り立て性, 引用・例示性という要素をとりあげ, それらが, 話者の認識として, 既知的な情報から経験的に一つの事態を抽出し, そこから, 予見される結果事態をもたらすという特徴を議論した.こうした結果事態の表明は, 現実の現象とは裏の関係にある希望的な事態出現への示唆が含意され, それが結果として自戒, 警告的な叙述表現を多くみちびいていることをみた.次に従属節にみられる特徴として, 不可避的な事態生起をうながす表現的特徴と, 主節においては話者の感慨を表明するような慣用的ないいまわし, 蓋然性や可能性を.あらわす文末的な特徴が観察される傾向を明らかにした.これらは話者における情報の共有性, 指示的な意味の認識性と深いかかわりがあることを示している.一方, テハ条件文には, いわゆる既知的な情報提起を前提とするような「ノデハ」をはじめとした構文的な特徴が見られる.本稿では・これらを従来のテハ条件文である基本的構文に対して派隼的構文というとらえ方をして, 後者の「ノデハ」「トイウノデハ」「デハ」にみられる表現意図については, 基本的構文の性格をひきつぐ体系的なとらえかたを試みると同時に, 「テモ」を始めとして, 他の複文要素と連動する談話展開的な機能性の高さについても考察を行った.
- 早稲田大学の論文
- 1997-03-31
著者
関連論文
- 高橋和巳『堕落』にみるの悲劇性 : 文学における戦争責任と戦後認識
- 「いう」と「おもう」の言語学 : 複合辞を用いた日本語の主体・主観表現 (グローバリゼーション時代の日本語 : その感性と活力)
- "心情の強調" をあらわすモダリティ形式と命題の評価性 : 「てならない」「ずにいられない」などを中心に
- 「結果誘導」節における発話意図 : 主観性をめぐる一考察
- 「テモ」の周辺 : 「テデモ」をはじめとして
- テハ条件文の構造と談話的な機能
- における意味の連鎖性
- ハルビンでの討論会に参加して(九・一八事変七〇周年国際研討会)
- 戦争被害と感情の記憶をめぐる省察 : 731部隊遺跡保護運動が語る記憶の傷痕(ヴァナキュラー文化研究会 : 語りえない人々の語りに関する超域的研究)
- 公開された「侵華日軍第731部隊遺跡」