<トコロ節>における意味の連鎖性
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概要
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本稿は文接続の多義性を考える試みとして, 形式名詞の一つである「トコロ」の文中における用法を分類し, その個別的な用法とともに相互の意味の重なり, 連鎖性を考察したものである.これまで形式名詞については文末表現の「〜わけだ」「〜ものだ」などの多義的な性格について議論されることが多かったが, 文中の形式名詞の接続表現についてはなお多くの複雑な問題が残されている.<トコロ節>のもつ意味の考察を通じていくつかの接続のタイプを考えることは, 形式名詞そのものの検討のみならず, 複文研究にとっても重要な示唆を与えることになろう.<トコロ節>は副詞節と補文節にみられ, そのおのおのの用法においては基本的な用法と, 派生的な用法とが観察された.とくに副詞節における<トコロデ>には時間節・場所節と逆条件節が, また補文節における<トコロヲ>では「捕獲, 捕捉」の意味のほかに「転移」といった意味概念が含まれる点, <トコロヘ>では「介入, 中断」といった意味のほかに「累積, 漸増」などの意味概念の派生を指摘した.これらの周辺には類似的な表現(「のを, のが」「ものの, ものを」「つもりが, はずが」等)もみられた.以上の視点から外国人日本語学習者の誤用例とアンケート調査から得られた資料をもとに, <トコロデ>と<トコロヲ>, <トコロガ>と<トコロヲ>などとの意味的な重なりをみた.同時にどのような用例において誤用が多くみられ, 習得が困難とされるかについても, 中国語, 英語, タイ語などの外国語に翻訳された<トコロ節>の受容認識の特徴を参考に考察した.「トコロ」には意味用法の多層性, 相互の連鎖性が見られ, それらの意味を正確に理解するためには適切な例文の提示が不可欠となる.
- 早稲田大学の論文
- 1996-03-31
著者
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