<論文>青年期の認知能力の発達 : 共学化のためのジェンダー発達心理学
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概要
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本稿は,青年期の認知能力に関するジェンダー発達の概念的枠組みを整理することを直接的な課題としているが,共学化のための方途を提示することも目的としている。世界の多くの国々においては,女性と男性の間の社会的不平等が存在するといわれており,その不平等によって,投票権や教育を受ける権利といった基本的な権利が制限されている。不平等や偏見は科学的根拠に基づいていなくても人々の間に広がっており,科学的な根拠に基づいて性差が見出された場合でさえ,それが社会的・政治的に誤用されることもある。科学的な根拠なしに広がる女性と男性についての思い込みや信念と,データによって認められた性差を区別するために多くの性差研究が行われている。認知能力に関して性差が認められるテストや課題についての研究では,認知過程についての脳のプロセスやメカニズムが専門的に研究されており,その中では,女性は言語的能力に優れ,男性は空間知覚能力に優れていることが明らかにされている。また. Williams & Bestら(1982)が25の民族の大学生を対象に,ジェンダー・ステレオタイプを調査した結果,男女の特性についての信念において比較文化的共通性が見出された。その共通した特性として,(1)男性は女性よりも,一般的により能力があるとみられている。(2)女性は男性よりも,より共同参加するとみなされている,の2つの特性が挙げられている。民族をこえてそれらのテーマは一般的であるが,その研究は比較文化的な変異性の証拠もいくつか明らかにしている。特に,男性が女性よりも能力があるとされる傾向は,より経済的に発展し,女性の読み書き能力が高く,そして大学に通う女性の割合が高い民族ではあまり証明されなかった。このことは,性が社会的・政治的により平等である国においては,ジェンダー・ステレオタイプやジェンダー役割があまり伝統的にならないことを示唆している。このような知見を踏まえて,共学化のための方途を思索してみた。
- 早稲田大学の論文
- 2003-03-31
著者
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