阪神淡路大震災が乳幼児に及ぼした心理的影響について : 保育園児98人の聴き取り調査から
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概要
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精神発達が未熟で心理的耐性が低い乳幼児の,災害による心理的影響についての報告は極めて少なく,実態が把握されていない。そこでわれわれは,阪神淡路大震災のおよそ5か月後,激震地に位置する保育園の園児98人の震災後の状況を保護者から聴き取り,以下の考察を得た。1.被災の程度が強いほど徴候が現われやすくまた長引きやすい傾向があった。2. 生活の安定は災害による心理的被害を軽減させ得る要因の一つであると考えられた。3. 保護者が徴候や不安を抱えている群のこどもが有意に多くの徴候を現わし,また長引く徴候も多かった。乳幼児の災害後の精神保健活動においては,保護者あるいは周囲の大人の精神状態の安定化を同時に行うことが必要であり,家族単位のケアが望まれると考えられた。4: 年齢,性別と徴候の現われ方との間には,明確な関連が認められなかった。5. 睡眠の問題,地震に直接関係する恐怖,退行を示すこどもが多く,また徴候が長期化しやすい傾向があった。今後震災から時間が経ち,特に地震に直接関係する恐怖が和らいだとき,これら以外の徴候が顕在化する可能性があると考えられるため,経時的な変化を追う必要があると恩われる。6. 乳幼児の災害による心理的被害を評価するのにDSM-VIの外傷後ストレス障害の診断基準を用いるのは困難であると考えられた。
著者
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