抗アセチルコリン受容体抗体による受容体崩壊に対するカルモジュリアン阻害の抑制作用

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重症筋無力症においては,アセチルコリン受容体(AChR)に抗AChR抗体が結合することによって,受容体の崩壊速度は促進される。この機序にはカルモジュリン(CaM)が関与していると思われ, CaM阻害剤を使用し,抗体によるAChR崩壊促進を抑制する試みを行った。CaM阻害剤として,W-7 (N-(6-aminohexyl)-5-chloro-1-aphthalene-sulfonamide),W-5 (N-(6-aminohexyl)-1-naphthalene-sulfonamide),トリフルオペラジン(TFP)の三剤を使用した。実験方法としてまず,培養したマウス骨格筋細胞株(G8細胞)及び初代培養筋細胞のAChRを125^1-αパンガロトキシン(αBgt)で標識し,抗体(抗シピレエイAChRマウス血清)存在下あるいは非存在下でCaM阻害剤添加の効果を非添加群と比較した。AChR崩壊速度は一定時間培養後に筋細胞の残存放射活性を測定し,添加前の値に対する比で表した結果,抗体存在下では,阻害剤無添加に比べ,いずれも10^-4Mの濃度で5時間目のAChRの崩壊を抑制した。抗体非存在下において,初代培養筋細胞では抑制的に働き,一方,G8細胞の場合,TFP,W7ともむしろ促進効果を示していた。W-5にはいずれも効果は見られなかった。さらに,CaM阻害剤のAChR合成に対する効果を検討したが,TFP,W-7いずれの濃度においても,コントロール群と有意差をみとめなかった。以上の成績より,CaM阻害剤はAChR合成に対し明確な効果を示さなかったが,抗体によるAChR崩嬢を有意に抑制作用し,内因性CaMがAChR崩壊機序に関与している可能性が示唆された。
神戸大学の論文

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