実践場面における自閉児の行動観察
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概要
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自閉児の行動をとらえるために,従来の自閉症状および発達診断に関する代表的な研究を検討したところ,幼児自閉症の定義に関しては,WHOの国際疾病分類に関する用語解説試案およびDSM-IIIに発達障害としてとらえようとする統一的方向が認められるが,発達診断に関してはまだその方法が確立されるに至っていないようである。障害をもつ子どもの理解はその子どもの示す行動が生起する理由を発見することが重要となる。特に障害の重い子やことばの発達が著しく遅れている子の場合には,彼等のとる行動しか有効な理解の手かかりがない。筆者は自閉児教育を有効にしかも適切におしすすめる内容や方法に迫ることを目的に,自閉児の指導場面における直接的,行動観察を研究課題としてとりあげた。観察対象は小学校に設置された情緒学級に通級する自閉児9名である。この子ども達の学校生活場面における行動を,生態学的観察法『HCTEIC』メソードを用いて実施した。この観察法は「教師-子ども関係」の具体的把握をめざして開発されたもので,その枠組は次のようになっている。大きくは場面カテゴリーと行動カテゴリーに分かれる。場面カテゴリーの内容は,当座の事態を示すもの,行動の活動型を示すもの,行動が起こっている場所を示すもの,社会的事態を示すものに分かれている。行動カテゴリーは,行動を起こしている中心人物,行動文の述語,行動の対象,行動の状態などに分かれている。観察の結果,対象児について次の事柄が明らかとなった。(1)行動発現の特徴,(2)対人対物行動のようす,(3)児童の状態像,(4)教師の働きかけ行動の内容などである。また子どもの学校生活における自由遊びや課題学習のようすが詳細かつ正確に把握することができた。これらは,自閉児の指導内容や方法を考えるための有効な手がかりとして活用されうる知見である。
- 1985-03-15