2〜7歳児におけるフッ化物歯面塗布に附随した不快症状の発現に関する研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
齲蝕予防の一方法として汎用されているフッ化物歯面塗布の安全管理の確立を目的として2〜7歳児, 495名(以下, A群と呼称)についてフッ化物歯面塗布を実施した際の使用薬液量の測定と, 質問紙を用いて歯面塗布に附随した不快症状の発現状況について調査した。歯科処置に附随する不快症状発現についての質問紙調査は, 同年齢のフッ化物歯面塗布以外の歯科医療受療児181名(以下, B群と呼称)についても行い, 両者の比較検討を行った。また, 歯面塗布に伴う口腔残留フッ素量の測定は38名の小児(以下, C群と呼称)について行い, 以下の成績を得た。1)A群における平均使用薬液量は1.01mlで, 加齢とともに増加する傾向がみられるが, 通法の歯面塗布における使用薬液量を2m1以下に抑えることは十分に可能と思われた。2)不快症状の発現率はB群においてA群より有意に高かった。3)B群において痛みや出血など既存の歯科疾患とその受療に起因することが明白な症例を除外してA群と比較したところ, 不快症状の発現率はなお高率であったが, その内容については両群ともにほぼ同種のものから成立し, 歯科受療に附随した精神的, 肉体的ストレスの関与が想像された。4)A群について同時に行なわれた質問紙調査等から, 当該小児の体質, 受療時の体調, 受療態度等が不快症状の発現と密接な関係にあるという成績が得られた。5)C群についての口腔残留フッ素量は, 平均が2.13mgF量, 体重1kg当り平均残留量が0.15mgFであり, 急性中毒量とされる2mg/kgの1/10以下の例が大多数であった。以上の成績から, フッ化物歯面塗布に附随して発現する不快症状は, フッ素による急性中毒症状とは考えられず, 歯科受療による精神的, 肉体的ストレスにより惹起されたと考えるのが妥当であろうと結論した。
- 東北大学の論文
- 1989-06-30