沖縄の民間巫者"ユタ"のカウンセリング機能の一研究 : 宗教的面接場面の分析から
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概要
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The aim of this article is to investigate the counseling function of Okinawan shaman "Yuta". Two interviews conducted by shamans are here in reported and are discussed from the viewpoint of comparisons with counseling interviews based on clinical psychology. Some of the findins were as follows; (1)The style of developing a rapport is unique, i. e. rapport is nurtured by guessing the facts related to the client by supernatural ways. (2)The interview is strongly led by the shaman. (3)The meaning of the client's distress is interpreted by relating it to the context of the lack of taking care of spirits of the client's ancestors. Finally. (4)the shaman concretely advises the client on how to overcome the distress based on the above mentioned context.本論文では,筆者がクライエントとなって体験したユタによるハンジ面接場面を2例提示し,それを臨床心理学的な観点から検討し,ハンジ面接の特徴を考察した。特徴として抽出したことを簡単にまとめると,以下の4点をあげることができる。(1)クライエントに関連した事実をユタが超自然的な方法で「当てる」ことで,独特のラポールが形成される。(2)面接過程をリードするのは一貫してユタである。(3)クライエントの悩みは祖先供養・土地供養という文脈に移し替えて解釈される。つまり,悩みの意味づけの変換がなされる。(4)祖先供養・土地供養の文脈で,悩みへの対処策がユタから具体的に提示される。以上にまとめた特徴は,筆者がクライエントとして体験したわずか2例のハンジ面接から取り出したものである。しかも先に述べたように,筆者は切迫した悩みを抱えてユタを訪ねたわけではなく,また沖縄文化を共有する人間でもないため,この2例が典型的なハンジ場面であるとは言いにくい面を持っている。したがって,ここで取り出した特徴は,今後の研究を進めていくための仮説と考えておくべきであろう。また,個人の悩みの意味づけが祖先供養・土地供養という文脈に変換されて解釈されることには,固有の文化の中で,それ独自の心理的意味があるのではないかということも検討課題として残った。今後は地元の人がクライエントとして受けているハンジ面接の場面を観察する作業を通じて,これらの点について検討していく必要があると考えられる。
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