ムズ(ル)からウズ(ル)へ : 終止法ウズは旧終止形の残存か?
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概要
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文献上に見られるムズ(ル)とウズ(ル)との間には用法上の断絶がある。書記言語としてのムズ(ル)は、中世前半期(13~14世紀頃)に幾つかの複合助動詞以外の用法を持たなくなっており、中世後半期(15~16世紀頃)の口語的文献(抄物・キリシタン資料・狂言など)に見られるウズ(ル)は、これら書記言語としてのムズ(ル)の直接の後身ではなく、(文献上に現れないという意味で)伏流した音声言語の形の、文献上への顕現と考えられる。 平安時代における助動詞としての誕生以降、音声言語では、ムズルの形が終止法・連体法ともに使われており、ムがンを経てウとなるにつれ、中世半ばまでに語尾ルを失い、終止法・連体法ともにウズの形が使われるようになった。これが抄物資料の登場とともに文献上に広く見られるようになる。ウズはその後中世末期に語尾ルを復活させたウズルがウズと並んで用いられた。 したがって、中世後半期の口語的文献に見られる終止法ウズを単純に「旧終止形の残存」と言うことはできない。
- 筑波大学の論文
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