1994年ノースリッジ地震による建築物の被害と強震記録による地震応答解析
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
1994年1月17日午前4時31分(日本時間午後9時31分)にLos Angelesの中心地であるダウンタウンから北西30kmのNorthridgeの深さ18kmを震源とし,マグニチュード6.7のいわゆる直下型地震の1994年Northridge地震が発生した.この地震は,マグニチュード6.7と地震の規模としては中規模であるが,震源深さが約18kmと比較的浅く,都市の直下で起きたためにLos Angeles各地に,人的,物的被害をもたらした.筆者等は,震央に近いNorthridgeを中心とした地域の,主として建築物の被害調査を行なった.地震によって被害のあった主な地域は,震源のあるSan Fernando valleyという,Los Angelesの中心地であるダウンタウンから北西に約30kmの盆地の内部および周辺の一部,そしてダウンタウンから西へ約20kmの海岸に近いSanta Monica地区,West Los Angeles地区である.今回の地震による建築物の被害は,駐車場建物,木造集合住宅,ショツピング.モールといった,特定の利用目的をもった数種類の構造物に被害が集中した.駐車場建物は,特にPCa造で,各ユニツト間の接合が不充分であったために,その接合部分の被害が多く,中にはそれが建物全体の被害をたらしたものもあった.木造集合住宅では,1階を駐車場スペースとするために,極端に剛性の低い構造となり,中には1階が潰れて甚大な被害となった建物もあった.四方を耐震壁で囲まれた巨大なショツピング.モールの建物は,耐震壁にせん断ひび割れの被害が多く見られた.また今回の地震は,地震活動が高い地域で都市直下に起こったため,緻密な観測網が張りめぐらされており,非常に多くの観測点で強震記録が観測された.そして,震央から南へ約5kmのTarzanaにおいて1.82gの水平地動最大加速度が観測され,0.9g以上の水平地動最大加速度もこの他に3地点で観測された.そこで,最大加速度0.9g以上の強震記録のうちの2つについて,弾塑性地震応答解析を行なって,その強震記録の破壊力の大きさについて検討した.その結果,Tarzana,Santa Monicaの強震記録は,地動最大加速度は大きいがその破壊力は既往の強震記録に比べてむしろ小さいものであった.しかしながら,Sylmarの強震記録は,単に地動最大加速度が大きいだけでなく,非常に破壊力のある地震動であることがわかった.Sylmarの強震記録の破壊力の大きさは,実際の建築物の被害で説明できる量をはるかに越えており,この記録の詳細な検討が今後必要となろう.The 1994 Northridge Earthquake with the magnitude 6.7 occurrd on January 17, 1994 at 4:31 a.m. U.S. Pacific Standard Time(9:31 p.m. Japan Time). Its hypocenter was below the San Fernando Valley about 30km north-west of the Los Angeles downtown area and at a depth of 18km. The magnitude was not so large, but the focal depth was shallow and the epicenter was close to the Los Angeles area, therefore this earthquake caused considerable damage there. We investigated the damage, especially to buildings in the Los Angeles area from January 22 to 26.
- 東京大学の論文
著者
-
境 有紀
東京大学地震研究所
-
中埜 良昭
東京大学生産技術研究所
-
前田 匡樹
横浜国立大学建設学科
-
前田 匡樹
東北大学大学院
-
塩原 等
建設省建築研究所
-
南 忠夫
東京大学地震研究所
-
大網 浩一
千葉大学工学部
-
大網 浩一
千葉大学大学院工学研究科
-
前田 匡樹
横浜国立大学
-
Shiohara Hitoshi
東京大学大学院工学系研究科
-
Shiohara Hitoshi
Department Of Architecture Graduate School Of Engineering The University Of Tokyo
-
Shiohara Hitoshi
Department Of Architecture Graduate School Of Engineering University Of Tokyo
関連論文
- 21099 鉄筋コンクリート造建築物の新しい静的耐震設計法 : (その3)応答変形について
- 23375 中低層壁式鉄筋コンクリート造建物の耐震性能評価に関する研究 : (その2) 動的な手法による耐震性能の評価(壁式鉄筋コンクリート造, 構造IV)
- 23374 中低層壁式鉄筋コンクリート造建物の耐震性能評価に関する研究 : (その1) 検討対象建物の概要および静的な手法による耐震性能の評価(壁式鉄筋コンクリート造, 構造IV)
- 23407 既存壁式鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断(壁式RC造・型枠ブロック造,構造IV)
- 23408 常時微動測定による静岡県県営壁式鉄筋コンクリート造共同住宅の動的振動性状評価(壁式RC造・型枠ブロック造,構造IV)
- 構造物系の非線形・不確定モデリング(構造部門(4)応カパネルディスカッション)(1994年度日本建築学会大会(東海))
- 21043 地域特性を考慮した都市の地震災害危険度の評価に関する研究 : その4 地震災害危険度パターン及び地震対策の急がれる都市の選別
- 23432 歴史的建築物の常時微動測定に基づく振動特性評価 : その1 ヴィコフォルテ教会堂(組積造建築)の振動特性評価(無筋組積造・耐震補強,構造IV)
- 23225 鉄筋コンクリート部材のひび割れ量進展過程に関する実験的研究 : その1 試験体および載荷計画(柱(2),構造IV)
- 23226 鉄筋コンクリート部材のひび割れ量進展過程に関する実験的研究 : その2 ひび割れ量計測方法(柱(2),構造IV)
- 23106 地震後の残留変位に着目したRC構造物の修復性能評価に関する解析的研究(設計・解析法(2),構造IV)
- 23470 無補強組積造壁を含むRC造架構の静的および動的載荷実験 : (その3)縮小ブロックの要素試験(枠組組積造,構造IV)
- 23471 無補強組積造壁を含むRC造架構の静的および動的載荷実験 : (その4)縮小試験体の設計(枠組組積造,構造IV)
- 複数回地震動を受ける鉄筋コンクリート構造物の損傷量推定手法に関する考察
- 被災RC構造物の残存耐震性能および修復性能の評価因子に関する研究
- 23447 無補強組積造壁を含むRC造架構の静的および動的載荷実験 : その2 縮小ブロックの製作(枠組組積造,構造IV)
- 23446 無補強組積造壁を含むRC造架構の静的および動的載荷実験 : その1 縮小試験体の計画(枠組組積造,構造IV)
- 23367 RC構造物の非線形地震応答解析に基づく残存耐震性能評価の検討(設計・解析法(1),構造IV)
- 地震発生シナリオを考慮したRC建物の安全性と修復性の相互関係
- RC構造物の非線形地震応答解析に基づく残存耐震性能評価の検討
- RC構造物のサブストラクチャ・オンライン実験におけるニューラルネットワークを用いた履歴推定手法の検討
- 研究速報「残留ひびわれ幅に着目した組積造壁を有するRC造架構の残存性能の評価」
- 研究速報「外装材取付金具の変形追従性能確認実験」
- 耐震補強の評価に関する研究委員会報告
- 限界状態設計コンクール(構造部門(限界状態) パネルディスカッション)(1999年度日本建築学会大会(中国))
- 学会の規準、仕様書のあり方(総合研究協議会II)(1999年度日本建築学会大会(中国))
- 21009 地域特性を考慮した都市の地震災害危険度の評価に関する研究 : その3 地震災害危険度の評価結果と実被害状況及び従来の地震被害想定結果との比較・検討
- 21008 地域特性を考慮した都市の地震災害危険度の評価に関する研究 : その2 都市の地震災害危険度の評価手法及び評価結果
- 21007 地域特性を考慮した都市の地震災害危険度の評価に関する研究 : その1 都市の地震災害危険度の評価軸及びそれらに関わる地域特性の要因
- 鉄筋コンクリート造建築物の長期的耐震修復経費に基づく要求スペクトル表示
- 23351 RC構造物の長期的耐震修復性能評価における地震動発生順序に関する検討(解析法(5),構造IV)
- 1994年ノースリッジ地震による建築物の被害と強震記録による地震応答解析
- 23430 既存鉄筋コンクリート造学校建築物の耐震診断・耐震補強事例の分析 : その 2 平面の構造計画による Is 値分布の違いと耐震補強方法
- 23429 既存鉄筋コンクリート造学校建築物の耐震診断・耐震補強事例の分析 : その 1 既存建物の Is 値分布の地域係数による検討
- 21497 耐震壁の存在が中低層RC建物の地震応答(損傷)に及ぼす効果に関する研究 : その1. 解析モデルと解析結果の定性的な検討
- 21039 地震動の性質と建物被害の関係
- 面外への転倒防止機構を有する靭性ブロックによる増設壁の既存RC架構への導入効果
- 23275 面外への転倒防止機構を備えるブロック壁を増設したRC架構の破壊実験 : その3 柱のせん断破壊以降の挙動と面外載荷実験(耐震補強(10),構造IV)
- 23274 面外への転倒防止機構を備えるブロック壁を増設したRC架構の破壊実験 : その2 面内載荷実験の方法と柱のせん断破壊以前の挙動(耐震補強(10),構造IV)
- 23273 面外への転倒防止機構を備えるブロック壁を増設したRC架構の破壊実験 : その1 ブロック壁の開発コンセプトと試験体(耐震補強(10),構造IV)
- 23444 無補強組積造壁を含むRC造架構の静的および動的載荷実験 : (その6)梁変形の有無による架構の最大耐力の検討(枠組組積造,構造IV)
- 23443 無補強組積造壁を含むRC造架構の静的および動的載荷実験 : (その5)静的載荷実験の概要および結果(枠組組積造,構造IV)
- 23253 RC構造物における地震応答終了時の残留変位の評価法に関する解析的研究(設計・性能評価(3),構造IV)
- 枠組組積造壁の水平力抵抗機構から推察される無補強組積造建築の高耐震化技術
- 1993年釧路沖地震による建築物の被害
- 21025 応答スペクトルを用いた震度算定方法の提案 : (その 2)低震度の定式化と震度算定のアルゴリズム
- 21024 応答スペクトルを用いた震度算定方法の提案 : (その 1)全体方針と高震度の定式化
- 建物被害率の予測を目的とした地震動の破壊力指標の提案
- 1999年台湾集集地震に基づいた建物被害を予測する地震動の破壊力指標の検討
- 23359 実観測記録に基づく鉄筋コンクリート造学校建物の地震応答解析(骨組(2),構造IV)
- 鉄筋コンクリート造学校建物で観測された強震記録と地震応答解析
- 21230 構造物の応答指標としての最大塑性流れの推定
- 21105 断層運動の不均質性を考慮した断層近傍の設計用地震動 : 地震動の簡単な評価
- 21008 1999年台湾集集地震による建物被害と地震応答解析 : その2 地震応答解析
- 21007 1999年台湾集集地震による建物被害と地震応答解析 : その1 建物被害と強震記録
- 1999年台湾集集地震による建物被害と強震記録を用いた地震応答解析 (英文)
- 21254 塑性流れの大きさを簡便に評価する方法
- 21230 構造物の弾塑性地震応答を考慮して地震動をサイン波1波に単純化する方法
- 21218 剛床仮定が緩んだ場合の弾塑性立体地震応答(その2) : 弾塑性地震応答解析
- 21085 断層運動の不均質性を考慮した断層近傍の設計用地震動評価 : 設計用地震動のための震源モデル化
- 「過大繰り返し地震力を受けるコンクリート部材の塑性域劣化性状研究委員会報告」
- 21 断層モデルを用いた震源近傍における設計用スペクトル(構造,構造系)
- 23015 繰り返しによる耐力低下が鉄筋コンクリート構造の地震応答に与える影響 : (その2)地震応答解析およびサイン波を入力した応答解析
- 23014 繰り返しによる耐力低下が地震応答に与える影響 : (その1)復元力特性モデルの開発
- 21514 塑性流れの大きさを左右する入力地震動の衝撃的な性質
- 繰り返しによる耐力低下を考慮した鉄筋コンクリート部材の復元力特性のモデル化
- 21171 地盤と建物の相互作用を考慮した弾塑性応答スペクトルの推定
- 21100 1995年兵庫県南部地震による地震動の破壊力
- 2234 応答スペクトルから推定される表層地盤の増幅特性について
- 2191 断層モデルおよびω^スケーリング則に基づいた地震動フーリエスペクトルの推定
- 2138 1993年釧路沖地震による鉄筋コンクリート造建物の地震応答 : (その2)入力地震動と被害建物の応答
- 2137 1993年釧路沖地震による鉄筋コンクリート造建物の地震応答 : (その1)自由度系による解析
- 21164 1993年釧路沖地震による被害と地震動 : (その3)被害建物の地震応答解析
- 21163 1993年釧路沖地震による被害と地震動 : (その2)釧路地方気象台強震記録の性質
- 21162 1993年釧路沖地震による被害と地震動 : その1. 被害概要
- 2157 地盤と建物の相互作用を考慮した弾塑性応答スペクトルの推定 : (その2)解析結果
- 2156 地盤と建物の相互利用を考慮した弾塑性応答ウペクトルの推定 : (その1)解析の対象と方法
- 2115 不整形地盤の影響について : その1 : SH波の定式化
- 21113 鉄筋コンクリート造プレキャスト建物の接合部のすべりが地震応答に与える影響
- 2315 必要保有水平耐力と変形制限に関する一考察
- 2183 Haskellモデルを用いた短周期地震動変位分布を評価する簡易手法
- 2898 曲げ圧縮破壊する高強度コンクリートを用いたRC柱の変形性能 : (その3)圧縮コンクリートの構成則のモデル化および柱の限界変形の推定
- 2897 曲げ圧縮破壊する高強度コンクリートを用いたRC柱の変形性能 : (その2)円形拘束コンクリートの中心圧縮実験
- 2896 曲げ圧縮破壊する高強度コンクリートを用いたRC柱の変形性能 : (その1)曲げ圧縮破壊するRC柱の限界変形
- 21250 高強度コンクリートを用いたRC柱に関する実験的研究 : (その3) 中心圧縮実験
- 21249 高強度コンクリートを用いたRC柱に関する実験的研究 : (その2) 帯筋と曲げ変形性能の関係
- 21248 高強度コンクリートを用いたRC柱に関する実験的研究 : (その1) 曲げせん断実験とその結果の概要
- 21117 高強度コンクリートを用いたRC部材の耐力と軸力算定式 : (その2)せん断耐力
- 21116 高強度コンクリートを用いたRC部材の耐力と軸力算定式 : (その1)曲げ耐力
- 2875 終局強度型耐震設計におけるRC純フレームの柱曲げモーメントの動的割増率
- 2875 フレーム応答解析における縮約解法 : 高層壁式ラーメン構造に関する研究
- 2219 地震動の破壊力に関する研究
- 38 地震動の性質と建物被害の関係
- 地震動の単純化および距離減衰式を用いて基盤動をサイン波1波で与える方法
- 3171 繰り返しによる耐力低下が鉄筋コンクリート構造の地震応答に与える影響(耐震一般)
- 3170 繰り返しによる耐力低下を考慮した鉄筋コンクリート部材の復元力特性のモデル化(耐震一般)
- 2069 曲げ圧縮破壊する高強度コンクリートを用いたRC柱の変形性能(柱-II)
- 3241 1999年台湾集集地震で被災した鉄筋コンクリート造建物の地震応答解析(耐震一般)
- 過大繰り返し地震力を受けるコンクリート部材の塑性域劣化性状研究委員会報告(委員会報告)
- 3200 鉄筋コンクリート造学校建物で観測された強震記録と地震応答解析(耐震一般)