X線天文衛星「あすか」による活動銀河核におけるソフトX線エクセス
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
最近の活動銀河核におけるソフトX線領域において,∿2keV以上の高エネルギーべき関数型成分の延長に対して,それを上回るエクセス成分が観測される天体がある。本論文では,「あすか」衛星によって観測した10個の活動銀河核スペクトルについて,そのソフトX線エクセス成分の研究を行った。ソフトX線エクセス成分のスペクトルモデルとしては,黒体輻射,熱制動放射,べき関数モデルなど5種のモデルを使用してスペクトルフィットを行った。l0個のスペクトルのうち9個で,ソフトX線エクセスの指標(0.5keVにおける高エネルギーべき関数型成分とソフトX線エクセス成分の強度比)fsE(@0.5keV)"が0.1を越え,ソフトX線エクセス成分のスペクトルパラメータが精度よく求まった。例えば,黒体輻射でフィットした場合はkT=100eV,熱制動放射ではkT=200eV程度が典型的な値である。5種のモデルのうち,どのモデルも統計的には棄却できなかったが,希薄な高温プラズマモデルは得られた重元素量が宇宙組成の1/00程度と低いことから適当でないものと結論した。本論文では,ソフトX線エクセス成分のスペクトルパラメータに関して,他の観測量との相関を調べた。結果として,ソフトX線エクセスのスペクトルを表すパラメータ(例えば, がX線光度やソフトエクセス比などによらないことが見いだされた。一方ソフトX線エクセス比 : fsE,についてはいくつかの興味深い相関(Blue bump 強度との正相関,さらにH_β線の幅との逆相関)が示唆された。続いて,本論文では,ソフトX線エクセスに対する│あすか│衛星の結果と,過去の衛星の結果,待にBOSATの衛星の結果を定量的に比較検討した。「あすか」の観測によると,ほぼ全てのソースでfsE(0.1-0.4keV)が1-10程度の値をとるのに対し,│あすか│の観測から求めたfsE(@0.5keV)は,たかだが∿2の値をとるにすぎない。これは,ソフトX線エクセスの寄与が両者のバンドで大きく異なっていること,従って0.5keV付近で強いカットオフがあることを示している。さらに,fsE(0.1-0.4keV)とfsE(@0.5keV)の比をもとに,「あすか」の解析から導いた黒体輻射モデルkT=100eVというスペクトルがROSATの観測結果まで考慮すると矛盾をきたすことを明らかにした。一方,熱制動放射(もしくはCut-off power law モデルT=1.3;kT=200eV程度のモデルは,ROSAT及び「あすか」両方のバンドでソフトX線エクセスのスペクトル形を記述するのに適当である。以上が,ソフトX線エクセスに関する一般的な性質として現時点における最も進んだ理解であると考える。最後に,ソフトエクセスの起源について,特に降着円盤からの輻射であるという立場から,簡単に議論した。ソフトX線エクセスとBluc Bumpに相関があることは,ソフトX線エクセスの起源として降着円盤モデルを支持するものである。しかし,単純な降着円盤モデル,特に黒体輻射では観測された輻射がエディントンルミノシティを越えてしまい不都合が生じる。少なくとも,降着円盤内部の構造を考えた輻射輸送モデル,もしくは高温のコロナによるコンプトン化モデルという改良が必要である。