センダンこぶ病に関する研究(林学科)
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概要
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1)本病は, 高知県, 熊本県, 鹿児島県の各一部地域および沖縄県に広く発生する。又, 台湾の2,3地域においても分布する。2)本病原細菌は, センダンに寄生し, 幹, 枝, 葉柄を侵かし, 黒褐色のこぶ(癌腫)を形成する。こぶを含む木口面では, 木部はおおむね, こぶに向って偏倚生長し, 包皮又は未包皮の入皮および偽年輪が認められる。病微から病名をセンダンこぶ病Bacterial Gall of Chinaberry (Melia Azedarach Lin.)と新称したい。3)本病原細菌は, 傷痍寄生菌であるが, センダン以外の植物に寄生性を示さなかった。罹病樹の核果およびこぶ病激発地の土壌のいずれからも, こぶ病菌を分離することはできなかった。4)本病病原細菌は, 1∿2本の単極鞭毛を有し, 大きさ1.4∿2.0×0.4∿0.5μ(平均1.8×0.5μ), 莢膜なく又, 異染顆粒, 芽胞共になく, グラム陰性, 非抗酸性であるが, 細菌細胞内に, Poly-β-hydroxybutyrateの存在は認められなかった。5)病原細菌は, 肉エキス・ペプトン寒天培地上に, 48時間で点状, 無色透明な小集落を形成する。72時間で大きさ0.3∿1.0mm, 周縁波状, 集落の形は, 円形, 中高, 透明, 格子状の模様を有す。集落の周りは蒼白色, 中央わずかに帯黄白色, 反射光で汚白色∿乳白色, 湿光あり, 表面平滑である。半合成馬鈴薯煎汁寒天培地では, 円形, 五角形, 菱形又は菊花状等不正形で, 表面しわ状のR型集落を形成し, これは安定した性状ではなく, 肉エキス・ペプトン培地では, S型集落に戻る。6)木部の異常分裂組織と健全木部は, 形成層とほゞ平行な面で, 一線を画し, 境界線内側の細胞は, 樹脂様内容物で充満する傾向がみられた。又, 異常分裂組織は水平方向に, 底辺を拡大しつゝ外部に突出し, こぶ(癌腫)に発達する。7)病原細菌は, 穿刺溝周辺の破壊細胞付近に, 暗黒色に染色した集団として多数認められる他, 異常分裂組織の細胞間隙にあまねく分散し増殖するのがみられた。しかし分裂組織で細菌窩の形成は認められなかった。8)病原細菌は, OFテストは酸化的, 硝酸塩還元性はない。硫化水素, インドール, 蛍光色素, ピオシアニン, 非蛍光色素を産生しない。シアン化カリウムブイヨンで発育阻害あり, 寒天培地上でレバンの生成はみられない。蔗糖から還元物質を生産するものとしないものがある。カタラーゼ, オキシダーゼ反応は陽性, リトマス牛乳培地を青変するが凝固, 消化をしない。アルギニンからアルカリを生成せず, リジンの加水分解はみられない。ゼラチンを液化せず, 澱粉の糖化およびエスクリン, グルコン酸塩, チロシンの加水分解はみられない。レシチンおよびマーガリンを分解しない。メチルレッド反応, V-P反応とも陰性であり, 尿素からアンモニアを生成しない。マロン酸塩を利用せず, フエニルアラニンの脱アミノテストは陰性, タバコに過敏感反応を生ぜず, ジャガイモの軟腐を起さない。Tween 80を加水分解する。ニコチン酸で発育促進がみられる。アスパラギン, DL-アルギニン, ヒスチジン, L-バリン, パントテン酸カルシウム, β-アラニン等のアミノ酸を利用しない。リボース, グルコース, マンノース, ガラクトース, サッカロース, フルクトース, グリセロール, クエン酸, コハク酸, リンゴ酸を分解して酸を生成する。キシロース, ラムノース, アラビノース, ラクトース, マルトース, セロビオース, メリビオース, トレハロース, デキストリン, グリコーゲン, デンプン, イヌリン, マンニトール, ソルビトール, イノシトール, アドニトール, ズルシトール, サリシン, 酒石酸を分解しない。9)病原細菌は, 最高発育温度35℃, 最低発育温度4℃, 最適発育温度27℃ 最高発育食塩濃度3%である。pH6.0∿8.5で生育がみられ, 特にpH6.0∿7.0で最も発育良好である。10)病原細菌は, 細菌学的諸性状から新種と認めPseudomonas meliae n.sp.と命名したい。
- 琉球大学の論文
- 1977-12-01
著者
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