イワサキクサゼミ Mogannia minuta Matsumura に関する生態学的研究 : 特にその発生消長と沖縄におけるサトウキビ栽培品種の変遷との関係(農学科)
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概要
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イワサキクサゼミMogannia minuta Matsumuraの生活史と, 1963年以来サトウキビ圃場において発生密度が増加した原因について調査した。その結果次のことが判明した。(1)25℃, 30℃における卵期間は, 平均でそれぞれ42日, 32日であった。(2)鉢植えサトウキビで飼育した幼虫の1齢終了日はふ化後33∿36日, 2齢は63∿66日, 3齢は165∿170日, 4齢は300∿305日, 5齢は640日以後と推定された。また幼虫期間は個体間差が大きいこともわかった。(3)鉢植えサトウキビ及びススキで幼虫を飼育した結果, サトウキビでは2年で羽化する個体が多く, ススキでは3年で羽化する個体が多かった。(4)サトウキビ圃場の更新により幼虫個体数が約95%も減少することがわかった。(5)サトウキビ圃場の成虫は羽化直後平均541個の卵を有しているが, 死後の卵巣内残存卵数は125個で, 約400卵産下することがわかった。ススキ原の成虫はそれぞれ504個, 204個で約300卵産下する。サトウキビ圃場の成虫は産卵数が多いと推定された。(6)天敵は25種類確認された。農薬散布によりアリ類は19∿33%の個体数に減少し, クモ類の個体数は26∿55%に減少する。(7)これらのことからイワサキクサゼミがサトウキビ圃場において発生するようになったのは, セミの発育経過日数が個体により差があること, 及び株出栽培の増加によりサトウキビ圃場が耕起されずにセミの1世代期間以上も安定した状態で続いたことによるものと考えられた。一度サトウキビ圃場で発生するようになったセミは, 1世代期間が短縮したこと, 産卵数が増加したこと, 株出サトウキビにおいて産卵数が多いこと, 農薬散布によって天敵が減少し, セミの生存率が高くなったことなどで個体数が増加したと判断された。すなわち品種の変遷や栽培方法の変化によってイワサキクサゼミは重要害虫になったものと判断された。
- 1976-12-01
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