容器, プラスチックパイプ, ビニールフィルムをしいた溝中の稀釈液肥の毛管移動による地下灌漑の開発試験(農学科)
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概要
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パイプ式ベッド(図1,2)16,蒸発散量測定装置(図4,5)2,砂ポット(図7)16個, 溝式ベッド(図8)1つを設置した。これらは水あるいは稀釈液肥が毛細管現象により自然給水されるようにした。パイプ式ベッドでは甘日大根, キュウリ, ナスを用いてベッドの構造と肥料試験を行なった。溝式ベッドではナスとブロッコリーの育苗試験とブロッコリーの栽培試験を行なった。培地には砂と砂壌土を用いた。肥料は住友液肥2号(10-5-8)を用いた。蒸発散量測定装置では導水管の中につめる材料の適否を試験した。砂ポットは肥料試験をする目的で造ったが, 個々のポットの蒸発量が微気象的な要因により著しく異なっていたため, 肥料試験はできなかった。溝式ベッドは蒸発量が激しく, 地中からの毛管水を利用することができないので, 雨水を貯めることはできても節水にならないと思う。水位は床面下13∿18cmに保つようにし, 肥料濃度は0.2%前後に保つようにした。導水管につめる材料は「細砂」が最もよく「微細砂」と「土まじりの細砂」もよい。粗砂, スポンジは急速に水を上げるが深くはあげない。砂壌土は水の上がる速度がおそく蒸発量に追っつかない。「土まじりの細砂」は砂をスクリーン(孔1.1mm大)から通したもので, これに混ざっている土の粒子を洗い流したものが「細砂」で, さらに細砂を水中でかくはんし, 急速に水を流した時, 水中にゆうえいしていた砂を集めたのが「微細砂」である。砂が石灰岩質である場合には年月が経つと固結して水が上昇しなくなることがある。パイプ式ベッドはナス栽培のCベッドが造り易く多くの作物の栽培に適している。根菜類の栽培にはDベッドが適している。この場合蒸発量は多くなる。導水管は貯水管より少しつき出る長さ(11cm)にして間隔を10cmにした方がよいと思う。雑草の多い畑地ではBベッドも効果的に使える。土壌病害のひどい畑地でAベッドで砂または消毒された土を用土としたものも利用できる。苗を定植する場合には貯水管は地表下10cm程度にし, 地表が乾燥して蒸発量が少なくなるようにした方がよいと思う。直播する場合には貯水管を地表下5cmにし, 常に地表がぬれているようにした方がよい。高温時に地表がぬれ, 蒸発量が多いと地表温は低くなる。育苗には実験7のE8ベッドか溝式ベッドが適している。この施肥給水法は作物の生育, 労力の節減において非常に効果的であり, 堆肥を必要とせず, 設置費, 運営費も安く, 耐久力もあると思われる。実用的にはコンクリートブロックを必要とせず, 大規模でも小規模でも設置できる。露地でもハウス内でも設置できるが, ハウス内では塩類の集積が問題となろう。
- 琉球大学の論文
- 1968-10-01
著者
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