貯水管からの毛管移動による地下給水栽培の研究 : ベッドの構造がブロッコリーの生育と水消費量に及ぼす影響
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概要
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この研究は京都大学園芸農場で行なわれた。ハッカダイコン, キュウリ, ナスを用いて諸型のベッドの構造と肥料試験を行なつた後, 第1図と第1表に示したとおり四つの型のベットを露地に設置した。これらのベッドは導水管に細砂 (篩目1.1mmのプラスチックスクーンを通し, 土の粒子を洗い流したもの) をつめ貯水管から毛細管現象により自然にかん水されるように設置した。1967年8月26日に各ベッドに4本ずつブロッコリー苗(長岡交配中生) を植え付けた。水は最初貯水管の容量8lに満たし, 蒸発散により水位が低くなり2lを残すまでになつた時補給した。植付前に地上から十分にかん水して毛管水の移動が速やかになるようにした。(植え付前日に貯水管を満たしておけば, 地上灌水は不必要である。) 住友液肥2号 (10-5-8) を週に1回20mlを貯水管に入れた。苗も毛細管現象により地下から自然に灌水されるように設置した溝式ベッドで育成した。結果は第2表と第2図に示した。植物が生長するにつれ床面が陰になつて地面蒸発量が少なくなり, また気温が下がつていくとともに給水量は次第に減つていつた。C型ベッドは蒸発量が少ないので給水量が少なく, 設置も容易で多くの作物の栽培に適しており, 根菜類のように深い耕土を必要とするそ菜の栽培には培地の下も耕やせばよい, と思われる。また雑草防除にはB型, 土壌伝染性病害の多い畑地ではA型ベッドがよいと思われる。移植栽培では蒸発量を少なくするため, 貯水管は床面下10cmあるいはそれ以上にし, 床面に乾いた層を形成させるほうがよく, 導水管は貯水管より少しつき出る長さ (11cm) にするほうがよいと思われる。導水管の間隔は, 床幅, 土質, 導水管の直径などを考慮して検討する必要がある。継続的に水を貯水管に入れることができれば, 貯水管は小さなもの (直径5cmほど) でよいと思われる。床面下3cmにおいた床半分の幅のフィルムは気温, 床土の厚さ, 床幅を考慮してその適当な深さを検討する必要がある。この灌水, 施肥法は作物の生育, 労力の節減に非常に効果的であり, 堆肥を必要とせず, 設置費, 運営費も安く, 耐久力もあると思われる。そして実用的にはセメントブロックを必要とせず, 規模の大小にかかわらず, 露地でもハウス内でも設置できるがハウス内では塩類の集積が問題となろう。導水管中の砂が石灰岩質である場合には年月がたつと固結して水が上昇しなくなることがある。
著者
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