分裂病の最早発型としての自閉症論 : 対象関係論による人格発達論から
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概要
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自閉症とは,現象学的理解によれば,自明性の喪失どころか,未だ成立もみないまま,自己疎外に陥った状態,つまり,世界内存在からはみだして,道をちがえてしまった結果,発症に至ったと考える。力動論的には,発達最早期の万能感および絶対依存経験の問題と考えられ,それらをめぐって子供の問題と環境側としての母親の問題を論じた。自閉症児の子供の問題としては,その中核としての第一次ナルチシズムの成立もみられず,万能感および絶対依存経験の変質により,空虚感や無力感にとって変わられ,それとの戦いとして,同一態維持および常動行為となって示されるのであって,そうした戦いすらみられなくなると無為や全くの受動性が示されると考える。治療論としては,人格化のプロセスが不可欠と思われるので,全人格的関与が可能な遊戯療法が今の所有効と考える。実際の遊戯療法の治療例をあげて,論証を試みた。
- 奈良女子大学の論文