<総説>レチノイド誘導体の免疫薬理学的研究
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概要
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レチノイドは細胞内の特異的レセプターと結合し,各種遺伝子の発現を調節することにより,細胞の分化,増殖および抗炎症作用など,種々の生理活性を示すことが多数報告されている。本研究では,これらの欠点を補うべく新しく合成されたレチノイド誘導体である,4-[(5,6,7,8-tetrahydro-5,5,8,8-tetramethyl-2-naphthyl)carbamoyl]benzoic acid(Am-80)の免疫薬理学的作用について検討し,次いでその作用機序についても合わせて検討した。Am-80は,マウスの2,4-dinitrofluorobenzene(DNFB)誘発接触性皮膚炎およびハプテン特異的1gE産生が強く見られるDNFB反復塗布によるマウス接触性皮膚炎において,耳介の腫脹を用量依存的に強く抑制した。また,Am-80はin vitroでの単核球からの抗原によるinterleukin-6(IL-6)ならびにinterferon-γ(IFN一γ)産生を抑制し,その抑制は転写レベルにおいて観察された。Am-80は,マウスのtypeIIコラーゲン誘発関節炎の発症を抑制し,C.Paruvum 前処置マウスのLipopolysaccharide(LPS)によるIL-6産生を抑制したが,ConcanavarinA(ConA)刺激したT細胞からのIFN-γおよびinteleukin-4(IL-4)産生には影響を及ぼさなかった。さらにAm-80は,ラットの実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)の臨床症状および脊髄への細胞浸潤を用量依存的に抑制したが,投与中止によりEAEの再発が観察された。また,脊髄におけるIL-6mRNAの発現レベルにおいても同様に,投与中止後のIL-6mRNAの発現上昇が観察された。以上の結果から,Am-80は,リンパ球以外の細胞からのIL-6およびIFN-γの産生を選択的に抑制することにより,マウスおよびラットの接触性皮膚炎ならびに自己免疫疾患発症を抑制することが示唆された。これらの知見は,免疫性疾患における炎症性サイトカインの重要性ならびにレチノィド誘導体の治療薬としての有用性を示唆するものである。
- 岐阜薬科大学の論文
- 2001-06-30
著者
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