張愛玲文学に見る絹の諸様相と"恋衣" : 「金鎖記」/「更衣記」/「CHINESE LIFE AND FASHIONS」
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概要
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本論は,2001年度および2002年度跡見学園女子大学特別研究助成金を受けて,倉石あつ子助教授との共同研究「『女性とモノ』についての考察1,2」を行った成果のひとつである。われわれは上海をはじめとする華南地方の都市での資料収集と,そこでの絹に関連した文化施設の見学,および浙江省の農村での養蚕の現況についての調査などを行なった。養蚕に関する研究と農村の現況報告については倉石論文で扱い,本論では主として製品としての絹と中国近現代文学との関連に視点をあてて論じた。絹はその主な製品が衣類であることから,中国の多くの文学作品でも言及されるところであるが,とくに張愛玲(1920-95)の作品のなかでは,それらが技法上の効果を高めるものとして,多用されている。本論ではまず,彼女の代表作である「金鎖記」1944のなかの,絹の諸様相を描写している箇所を拾い上げ,その意味するところを分析する。また張愛玲は衣服にこだわったことでも知られ,小説での言及はもとより,エッセイでも正面から論じている。とりわけ初期の英文エッセイChinese Life and Fashionsと,大枠はそれに取りながら中国語で論じた「更衣記」は,みごとな中国文化史論になっていて,単なる"恋衣"(Clothes fetishism)を超えている。本論では,その背景にある,張愛玲が香港大学時代に影響を受けた可能性のある許地山(1893-1941)の著述や活動についても考察し,この影響関係から開けてくる張愛玲の中国近現代文学史への位置づけの展望についても論じる。
- 2003-03-15
著者
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