<平成 13 年度(2002 年 3 月)修士論文要旨>地域経済の「自立」と産業ネットワークに関する一考察
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概要
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本論の目的は, 製造業の空洞化が地域経済の空洞化を招いている現状をふまえ, 地域経済の活性化という観点から, 今後も製造業がその中心産業であることを基底に, 地域経済の活力を維持していくための新たな製造業のあり方について, 一つの方向を示すことにある。具体的には, 大量生産企業の垂直統合システムに組み込まれ, その底辺部として機能してきた地域経済が, 大量生産システムの直面する限界と, 産業のサービス化の進展に伴う大都市集中現象という2つの大きな環境変化により, かつてない苦境に立たされていることを認識し, 地域経済がこの危機を克服し, 中央からの自立と経済活動の安定化を達成するための新たな方向として模索されつつある, 中小企業のネットワークによる多品種少量生産システムヘの構造転換について, その理論と現実の到達点を明らかにすることを目的としている。はじめに, 現状認識のために, 国内製造業の空洞化とアジア経済の成長, 経済のサービス化現象と大都市集中の進行状況を, 主に統計データによって把握し, かかる状況が地域経済に与えている影響について, 空洞化による地域的技術集積の喪失と, 経済のサービス化がもたらす大都市集中の加速という問題点を提起する。次に, 地域経済がこのような状況に陥った一つの原因を, M.J.ピオリとC.F.セーブルの『第2の産業分水嶺』によりながら, 大量生産システムあるいはフォーディズムという生産パラダイムの限界として捉え, 代替パラダイムとしてのクラフト的生産システム(中小企業ネットワーク型多品種少量生産システム)について論じている。クラフト的生産システム(中小企業ネットワーク型多品種少量生産システム)の事例としては, 「第3のイタリア」および東大阪市を取り上げている。この事例分析の論点は, 両地域の成功要因を, 大量生産企業の垂直統合システムに組み込まれた, 多くの日本の地域的産業集積に適用するための条件と可能性を探ることにある。「第3のイタリア」の事例では, C.トゥリジリアによる「第3のイタリア」形成において政治や文化が果たしている役割の分析と, 中小企業ネットワーク型経済にとっての課題であるマーケットアクセスの方法についての考察が中心課題となっている。東大阪市の産業集積地区については, 市役所, 商工会議所, ニッチ市場におけるトップ企業, 異業種交流グループに対する実地調査の結果をもとに, 多品種少量型生産システムの優位性と課題について述べている。加えて, 筆者が共同で行った『呉市製造業実態調査アンケート』の結果を用いながら, 日本型産業集積における, 中小企業ネットワーク経済形成の実現可能性について論じている。そして, 中小企業ネットワークによる多品種少量生産システムの一つの到達点として, 東大阪市において成功を収めている異業種交流グループ, 「ロダン21」の事例を紹介する。ここでは, グループの正副代表, ニーズとシーズを結びつける役割を担う「コーディネーター」へのインタヴュー等から得られた情報を交えながら, 異業種交流ネットワークによる「多様なモノづくり」のシステム的成功要因, 基本コンセプトを抽出している。最後に, 「ロダン21」モデルによる中小企業ネットワーク型多品種少量生産システムが, 局所的なネットワーク形成から, ネットワーク同士が連携することにより, 更に広域的なネットワークを形成することで, 個々の地域的産業集積が, 技術の偏在性という問題を克服し, 市場の変化に対する柔軟性を高め, 「自立」的に機能し始めることの実現可能性を示唆している。
- 2002-03-20
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