小胞体ストレスによる神経変性の分子機構 : AR-JPのメカニズム
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
パーキンソン病は,ドパミンニューロンの選択的変性による進行性の運動障害を主症状とする神経変性疾患である.家族性パーキンソン病の一型である常染色体劣性若年性パーキンソニズム(AR-JP)の病因タンパク質であるParkinは,基質タンパク質を特異的に認識し,プロテアソームによる分解を促進する酵素,ユビキチンリガーゼ(E3)である.このためE3の不活性化により,基質タンパク質が異常蓄積してAR-JP発症に至ると考えられる.その仮説に基づいてParkinの基質タンパク質が探索された結果,現在では約10種類の異なる分子がParkinの基質として報告されている.その中で我々が見出したパエル受容体(Pael-R)は黒質ドパミン細胞に高度に発現する,リガンド不明のGタンパク質共役型受容体である.Pael-Rは折れたたみ(フォールディング)が困難なタンパク質で,新生タンパク質の約50%がフォールディングに失敗し,構造が異常で機能をもたないミスフォールドタンパク質になる.ParkinはE3として構成的にミスフォールド化Pael-Rをユビキチン化し,その分解を促進している.AR-JPではParkinが不活性化されるために分解されなくなったミスフォールド化Pael-Rが小胞体に蓄積し,小胞体ストレスによって細胞死を引き起こすと考えられる.Pael-Rは培養細胞でアポトーシスを起こすだけでなく,ショウジョウバエのニューロンで過剰発現させてもドパミンニューロン選択的細胞死を引き起こすことが示された.一方Parkinノックアウトマウスではドパミンニューロン死は起こらず,既知の基質の蓄積もみられないことから,病因となる基質の特定は困難な状況である.Pael-R蓄積による小胞体ストレスがAR-JPの神経変性をどこまで説明できるのか,最新のデータに基づいて議論する.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
- 2004-12-01
著者
関連論文
- 振戦様ミオクローヌスと稀発大発作とをみとめた Unverricht-Lundborg 病の成人例
- Parkinノックアウトマウスにおける線条体ドーパミン放出能の検討(平成19年度老人性疾患病態・治療研究センター研究発表会)
- 発作時に Gerstmann 症候群を呈した症候性頭頂葉てんかんの1例
- 食後に離人症体験、おかしみの情動、失語から始まるeating epilepsyの1例
- 副甲状腺機能低下症による低カルシウム血症を合併した側頭葉てんかんの1例
- P2-62 坑てんかん薬クロバザムおよび活性代謝物の体内動態に関する解析(薬物治療6,一般演題(ポスター),てんかん制圧:新たなステージに向けて,第41回日本てんかん学会)
- N-1 頭皮上脳波・機能的MRIの同時計測によるてんかん性活動の局在 : 皮質脳波所見との比較(神経科学セッション,てんかん制圧:新たなステージに向けて,第41回日本てんかん学会)
- P1-20 低頻度硬膜下電気刺激後に生じるてんかん原性抑制効果と皮質間機能的連結との関連の検討(脳波・脳磁図2,一般演題(ポスター),第42回日本てんかん学会)
- O2-58 特発性全般てんかんの全般性棘徐波生成に関わる皮質・皮質下構造ネットワーク : 脳波fMRI同時計測による検討(脳波・脳磁図3,一般演題(口演),第42回日本てんかん学会)
- O2-8 側頭葉底部言語野の機能および解剖的解析 : 高頻度皮質電気刺激による検討(外科治療4,一般演題(口演),第42回日本てんかん学会)
- P1-29 部分てんかんにおける超高磁場磁気共鳴画像装置(3ステラMRI)による局所病変の検索経験(画像5,一般演題(ポスター),てんかん制圧:新たなステージに向けて,第41回日本てんかん学会)
- N-2 限局性皮質異形成のてんかん焦点における発作起始前後の皮質興奮性の変容(神経科学セッション,てんかん制圧:新たなステージに向けて,第41回日本てんかん学会)
- NR-1 ヒトの難治てんかんにおけるてんかん焦点と2次性焦点間の機能連関 : CCEPによる検討(神経科学セッション関連,第40回 日本てんかん学会)
- 視神経炎様症状を呈した遺伝性血管性白質脳症 (CARASIL) の1例
- Leucine-rich glioma-inactivated 1 (LGI1) 変異をともなう常染色体優性外側側頭葉てんかんの1例
- Binswanger 病の脳機能画像
- 左手自己所属感の消失のみを呈した脳梁離断症候群の1梗塞例
- P-03 歓喜の感情性単純部分発作を呈する3例の臨床像の検討(神経心理・精神症状,一般演題(ポスター),第40回 日本てんかん学会)
- 常染色体劣性若年性パーキンソン病におけるPael recepter, ERストレスについての検討(平成13年度順天堂大学老人性疾患病態・治療研究センター発表会抄録)
- 遺伝性パーキンソン病研究の最前線--分子標的治療にむけて (特集 神経・筋疾患の分子標的治療)
- Round Table Discussion 座談会 パーキンソン病基礎研究の進歩と展望
- 小胞体ストレスとパーキンソン病 (特集 内科医のためのパーキンソン病診療) -- (病態の解明と研究の進歩)
- Parkin knock out mouseはプロテアソーム阻害剤投与で脆弱性をしめす?(平成16年度順天堂大学老人性疾患病態・治療研究センター研究発表会抄録)
- これからの疾患モデル動物(第6回)筋萎縮性側索硬化症:変異SOD1マウス
- 小胞体ストレスによる神経変性の分子機構 : AR-JPのメカニズム
- パーキンソン病と小胞体ストレス (特集 蛋白質のユビキチン化と疾患) -- (疾患とユビキチン化)
- Parkinは「品質管理ユビキチンリガーゼ」か? (特集 蛋白質の品質管理と神経疾患)
- パーキンの機能
- 小胞体ストレス制御によるパーキンソン病治療の可能性 (特集 第37回脳のシンポジウム) -- (新しい遺伝子・細胞治療の確立--パーキンソン病の治療を目指して)
- 理研BSIサマースクール2001実行委員長として見たこと考えたこと
- 抗アポト-シス因子による細胞死防御
- 筋萎縮性側索硬化症--病態解明と治療の現状 (特集 神経変性疾患研究の最前線--分子病態と治療に向けて)
- 細胞死の分子メカニズム--多様性への理解 (特集 細胞の生と死の制御機構の多様性)
- IAPの作用メカニズムと神経細胞死防御 (特集 臓器(組織)とアポトーシス)
- Parkin knockout mouse脳を用いた蛋白質プロファイリング解析(平成18年度老人性疾患病態・治療研究センター研究発表会)
- パーキンソン病におけるドーパミン神経細胞死--異常蛋白質の蓄積は原因か結果か? (細胞における 蛋白質の一生--生成・成熟・輸送・管理・分解・病態) -- (病態・フォールディング病)
- パーキンソン病に関与する異常タンパク質の分解機構--新規Parkin結合分子は,ユビキチンリガーゼと分子シャペロンであった
- パーキンソン病と小胞体ストレス (特集 小胞体ストレスとアポトーシス:オルガネラから発信される新たな死のシグナル)
- ユビキチンリガーゼとしてのparkinとParkinson病--家族性Parkinson病から孤発型Parkinson病へ (〔2001年8月〕第1土曜特集 神経疾患の分子医学) -- (神経変性疾患)
- 妊娠18週で遺伝子組み換え組織プラスミノゲンアクチベーター (recombinant tissue plasminogen activator : rt-PA) 静注療法を施行された脳塞栓症の1例
- 自律神経障害の新たな疾患概念 ; Autoimmune Autonomic Ganglionopathy
- 筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療戦略
- 筋萎縮性側索硬化症と栄養因子 (特集 Motor Neuron Disease)
- 脳血管障害に基づく認知機能障害の病態