維持血液透析患者に発症したフルニエ壊疽の2例
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概要
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フルニエ壊疽は会陰部の劇症壊死性筋膜炎とされ,早期に診断加療しなければ予後不良の病態として知られている.今回われわれは,フルニエ壊疽を発症し,救命し得た維持血液透析患者2症例を経験したので報告する.症例1は73歳,男性.原疾患は慢性糸球体腎炎であり,8年の透析歴がある.2007年4月肛門周囲膿瘍を契機に発熱,陰嚢腫大を自覚し当院泌尿器科を受診.悪臭と一部皮膚壊疽を伴う顕著な陰嚢腫大,高度の炎症反応,腹部CTで陰嚢・臀部皮下にエアーを伴う膿瘍を指摘.フルニエ壊疽と診断.同日,患部の切開排膿を行い,MEPMの全身投与を開始.患部の細菌培養からは嫌気性菌のBacteroides fragilisが検出され,右精巣摘出を含む広範なデブリートメント,連日の創部洗浄を施行.術後60病日に退院した.症例2は75歳,男性.原疾患は糖尿病性腎症であり,5か月の透析歴がある.2007年8月尿道カテーテルによる尿道損傷を契機に発熱,陰嚢腫大が出現.高度の炎症反応,腹部CTで陰茎・陰嚢にエアーを伴う膿瘍を認めフルニエ壊疽と診断した.同日,左精巣摘出を含む広範なデブリートメントと膀胱瘻造設を行い,MEPMの全身投与を行うことで治癒した.患部の細菌培養からは嫌気性菌のBacteroides fragilisが検出された.両症例とも血液透析患者であり,患者の抵抗性減弱(宿主側要因:感染防御機構の低下,栄養状態の低下,高齢,糖尿病の合併)などの潜在的病態が基礎にあると考えられる.このような患者に発熱,会陰部から下腹部の急激な発赤,腫脹を認めた際は,本疾患の発症を念頭におき対処することが必要である.
- 2009-07-28
著者
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川越 伸俊
福岡県済生会二日市病院泌尿器科
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川越 伸俊
済生会二日市病院泌尿器科
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長谷川 善之
済生会二日市病院腎臓内科
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森本 順子
済生会二日市病院腎臓内科
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玉井 路加子
済生会二日市病院腎臓内科
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中園 秀朗
済生会二日市病院腎臓内科
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徳丸 良太
済生会二日市病院皮膚科
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間野 正衛
済生会二日市病院外科
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玉井 路加子
済生会 二日市病院 腎臓内科
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森本 順子
済生会 二日市病院 腎臓内科
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