キャッスルマン病治療薬, 遺伝子組換えヒト化抗ヒトインターロイキン-6受容体抗体(トシリズマブ)の薬理学的特徴と臨床効果
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概要
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アクテムラ注200(Actemra®)は遺伝子組換えヒト化抗ヒトインターロイキン-6受容体抗体(トシリズマブ:tocilizumab)を主成分とする点滴静脈内注射剤で,本年4月にキャッスルマン病(Castlemans disease:CD)治療薬として製造承認された.CDはリンパ節腫脹を伴う良性のリンパ増殖性疾患であり,1989年にCD患者のリンパ濾胞で大量のインターロイキン-6(IL-6)が分泌されていることが見出され,CD患者に特徴的な発熱,肝脾腫,食欲不振,および倦怠感などの臨床症状,並びに,高γグログリン血症,貧血,C反応性タンパク高値,および赤血球沈降速度の上昇などの検査値異常は,IL-6の作用に起因することが明らかにされた.トシリズマブは,IL-6とIL-6受容体との結合反応を競合阻害するIL-6阻害薬である.本抗体は種特異性が高く,マウスのIL-6受容体とは結合しないため,マウスモデル実験ではラットで作成したマウスIL-6受容体に対するモノクローナル抗体(MR16-1)が用いられた.ヒトIL-6遺伝子を導入したトランスジェニックマウスでは,CD患者と類似した症状,すなわち貧血,高γグロブリン血症,自己抗体産生,肝脾腫,尿タンパク,メサンギウム細胞増殖性腎炎などが発現するが,MR16-1を注射することで,これらの症状はほぼ完全に抑制された.トシリズマブは,健康成人での第一相試験の後,CD患者での第二相試験,並びに継続投与試験で有効性と安全性が検証された.すなわち,炎症反応の抑制に加えて,全身倦怠感,貧血,および低栄養状態等のCDに伴う異常所見の改善が確認され,腫脹リンパ節の縮小や副腎皮質ホルモンの減量が可能となった.主な副作用は,鼻咽頭炎,発疹,腹痛等であった.本薬は世界で初めてのCD治療薬であり,さらに我が国発の第一号抗体医薬品として,また,IL-6阻害に基づく治療薬として初めて上市されるもので,その特効薬的な治療効果に大きな期待が集っている.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
- 2005-12-01
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