スチレンの熱ラジカル重合に対するスルホン酸の抑制効果
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概要
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スチレン製造プロセスではジニトロフェノール類が重合抑制剤として使用されているが, 毒性および自己反応性が高いという問題点を有している。取扱性改善, 環境負荷低減の観点からジニトロフェノール類に替わる重合抑制剤の開発が望まれている。重合抑制剤の開発を目的として検討を実施する中で, ドデシルベンゼンスルホン酸 (DBS) がスチレンの熱的ラジカル重合の抑制剤として作用することを見い出した。本研究では, DBSの重合抑制機構に関する知見を得るため, DBS存在下でスチレンのラジカル重合を実施し, 発生するポリマー重量の時間変化, 平均分子量の測定を行った。その結果, DBS存在下で生成するポリマーの平均分子量はDBS無添加時に生成するポリマーと比較してわずかに大きくなることが明らかとなった。また, DBS存在下ではポリマーの生成が抑制されるのに伴って1-フェニルテトラリン (1) が生成することが分かった。これらの現象から, DBSは開始ラジカルの前駆体であるDiels-Alder付加体 (4) に触媒的に作用して1への異性化を促進し, 結果として開始ラジカルの発生量を減少させ, 重合を抑制することが示唆された。DBS単独での重合抑制効果はジニトロフェノール類に比べて貧弱であるが, 両者を組み合わせることにより, 優れた相乗効果を示すことが明らかになり, 毒性の高いジニトロフェノール類の使用量を減少できることを見い出した。
- 2003-11-01
著者
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富岡 秀雄
三重大学工学部分子素材工学科
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富岡 秀雄
Chemistry Department For Materials Faculty Of Engineering Mie University
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富岡 秀雄
三重大学工学部
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中嶋 淳一
伯東(株)四日市研究所
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谷崎 青磁
伯東(株)四日市研究所
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