ヴェネツィアの建築と色彩に関する研究

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イタリアのヴェネツィアは6世紀に軟弱地盤の上に構築された都市で「ヴェネツィアとその潟」という名称で1987年に世界遺産に登録された。ヴェネツィアの街は、大きく逆S字形に蛇行した運河にそって形成されており、運河の長さは3800m、巾30〜70m、深さ5m。運河の数が160、橋の数400で構成されている。交通の軸として水路を中心に発達したため輸送手段はすべてを船に依存している。なおヴェネツィアの世界遺産登録の中には、運河に点在する建物や屋根付きのリアルト橋を代表とする多くの橋や市場が含まれている。本研究は、ヴェネツィアの景観色彩に着目したもので、統一された屋根の色、煉瓦や石材および剥がれかかった漆喰のエイジングの色彩、黄色の土や煉瓦を粉砕して混ぜた漆喰壁に関して素材の色彩調査を行った。長年の風化によって生じた劣化を目立たないように補修する方法にも注目をした。ヴェネツィアを構成する色彩調査は, 長さ4キロにおよぶ大運河の両岸にある建物外壁を抽出して調査範囲とした。建物の色彩構成の色彩測定は、まず外壁の撮影を行いプリントした紙を部材別に切り出し、その紙片を色別に精密重量測定によって重さを求めて色の分量を求める方法をとった。毎年約7ミリずつ地盤沈下を続け、500年後には水没するといわれるヴェネツィアの色彩は年々変化しながら消えてゆく運命にある。エイジングという色彩の美学をここに記録することを調査の目的とした。
日本色彩学会の論文
2005-06-01

ヴェネツィアの建築と色彩に関する研究

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