調理と衛生 : (2)食品添加物の役割と微生物
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概要
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食品の保存法, それは微生物との戦いの歴史であり, また発酵食品という共存の歴史であった。近年の科学技術の進歩は食品の製造, 流通に革命的な発展をもたらし, 各種の食品の微生物学的品質は昔とは比較にならないほど良好な状態となっている。こうした中で食品添加物も一つの役割を担っているが, 新たな加工食品の開発, 社会の変遷に伴って, 添加物の扱い方も変わってくるであろう。最近は, 消費者は自然食品的なものを好むためか, 昔ながらの天然物, すなわち既存添加物を第一に考え, 安全性の面から化学的合成品といわれた指定添加物を敬遠する傾向が強い。天然物についてはプロタミン, ポリリジン, ペクチン分解物, ワサビをはじめ, 各種の香辛料などの食品保存効果が研究され, すでに実用化されているものもあるが, その作用は非常に弱く, 安全性についてはこれからの研究によって明らかにされるものであろう。今回は指定添加物について日本人の食生活における平均的な摂取状況, さらにソーセージの製造を例に微生物制御のための添加物の扱い方, および著者らの微生物実験成績を紹介した。最近では企業努力によって加工食品の微生物学的品質は想像以上に良好な製品として市場に出されており, むしろ末端の消費の場において台無しにしていないかを考えてみる必要もあろう。また食品産業は時代によって常に流動的であり, それに伴って添加物の利用も変化することは予想できる。近年, 日本人の生活習慣病と食生活との関係が問われている。例えば塩の摂取量軽減のために食品は低塩化の方向にあるが, それに伴って保存の方法にも新たな考えが求められてくるであろう。このように人間の生活と微生物とは永遠の課題として切り離して考えることは出来ないのである。
- 2005-06-20