早期に体外循環導入と大量γグロブリン療法を行い治癒し得た劇症型心筋炎の1例
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概要
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症例は, 24歳, 男性. 入院4日前から39°C台の発熱を自覚し, 次第に咳嗽と胸痛および呼吸困難の増悪を認め当院救急外来受診した. 低血圧と著明な低酸素血症を認め, 心電図上広範囲の誘導でのST上昇と胸部X線で両肺のうっ血所見を認めた. 心臓超音波検査で左室駆出率 (ejection fraction ; EF) 20%とび漫性左室壁運動低下が認められ, 入院当日施行した冠動脈造影で冠動脈に有意狭窄はなく, 経過より心原性ショックを併発した劇症型心筋炎と診断した. 大動脈内バルーンパンピング (intraaortic balloon pumping ; IABP) 挿入下でのスワン・ガンツカテーテルデータでもForrester IV型 (心係数1.8L/分/m2, 肺動脈楔入圧23mmHg) であったため, 経皮的心肺補助装置 (percutaneous cardiopulmonary support ; PCPS) を導入し人工呼吸管理を開始した. 第1~2病日に大量γグロブリン療法 (献血グロベニンI® 2g/kg/48時間) を行い, 補助循環管理における出血傾向や感染症などの合併症に対して対症的に管理した. 第6病日より心機能の回復 (心係数3.5L/分/m2以上) を認め, PCPSを離脱した. その後IAPBも離脱でき, 第9病日には人工呼吸管理からも離脱し一般病棟へ転床となった. 第13病日に左室造影と心筋生検を施行した. EFは46%に回復しており, 心筋生検では心筋細胞にリンパ球浸潤と心筋細胞の変性・消失を認め, ウイルス性心筋炎に矛盾しない所見であった. 後遺症なく第18病日に独歩退院した. 致死的疾患である劇症型心筋炎に対して早期に体外補助循環装置を導入し, 大量γグロブリン療法を行ったことが早期の生存退院と心機能の回復に寄与したと考えられた.
- Japan Heart Foundationの論文
著者
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田中 博之
東京都立多摩総合医療センター循環器内科
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麻喜 幹博
東京都立多摩総合医療センター循環器内科
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磯貝 俊明
東京都立多摩総合医療センター循環器内科
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上田 哲郎
東京都立多摩総合医療センター循環器内科
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永田 健一郎
東京都立多摩総合医療センター循環器内科
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蟹沢 充
東京都立多摩総合医療センター循環器内科
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森 大
東京都立多摩総合医療センター循環器内科
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笹川 佳苗
東京都立多摩総合医療センター循環器内科
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斉藤 千紘
東京都立多摩総合医療センター循環器内科
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三ツ橋 佑哉
東京都立多摩総合医療センター循環器内科
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小暮 智仁
東京都立多摩総合医療センター循環器内科
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二川 圭介
東京都立多摩総合医療センター循環器内科
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