低分子経口抗リウマチ薬トファシチニブクエン酸塩(ゼルヤンツ®錠5 mg)の薬理学的特徴および臨床試験成績
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概要
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すでに複数の関節リウマチ(RA)治療薬が承認・販売されているが,メトトレキサートや生物学的製剤でもRA の寛解率は3~5 割程度でしかなく,非経口投与による利便性の低さや連用による抗薬剤抗体の出現が効果を減弱する可能性があるなどの問題点から,RA 治療用の生物学的製剤の問題点を改善し,それ以上のベネフィットを持つ経口投与可能な薬剤の開発が期待されている.トファシチニブクエン酸塩は,米国ファイザー社にて創製された世界初のヤヌスキナーゼ(JAK)阻害作用を有する経口投与が可能な低分子の分子標的治療薬で,本邦では「既存治療で効果不十分な関節リウマチ」を効能・効果として2013 年3 月に承認された.トファシチニブは薬効薬理試験でJAKファミリーのすべてのキナーゼに対して強い阻害活性を示し,細胞を用いた試験ではJAK1 およびJAK3 依存的シグナル伝達をJAK2 依存的シグナル伝達よりも強く阻害した.トファシチニブのRA に対する効果は,マウスコラーゲン誘発関節炎およびラットアジュバント誘発関節炎における症状観察および組織学的検査によって確認された.また,薬効がみられた用量では炎症性タンパク質および遺伝子発現の有意な減少も認められた.さらに,臨床試験ではトファシチニブは単剤投与または既存の疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)との併用投与のいずれによってもRA 治療に有効であり,既存のDMARD で効果が不十分であるRA 患者にも有効であることが示された.また,安全性に関しては,生物学的製剤と同様に重篤な感染症が認められた.リンパ腫を含む悪性腫瘍,消化管穿孔,心血管系事象および間質性肺疾患はRA の重篤な合併症で,RA治療薬による増悪も報告されていることから,これらの患者に対しては,添付文書の注意事項を遵守して使用することが重要である.
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