旧義歯の調整に対する術者と患者の評価の経時的変化および両者の関係について
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概要
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高齢者人口が21%を突破した本邦において, 質の高い義歯治療を行うためには, 術者と患者の義歯に対する評価を適切に把握することが重要である. そこで, 新義歯の治療過程における旧義歯の調整が, 術者と患者の評価の経時的変化にどのように影響するかを明らかにすることを目的とした. 新義歯製作を希望し, 治療を行った65歳以上の上下無歯顎全部床義歯症例の患者20名 (男性6名・女性14名, 平均年齢78歳) の旧義歯を評価した. 義歯治療のテクノロジーアセスメントとして義歯の状態 (総義歯評価) ・顎堤状態の評価・咀嚼機能評価・満足度評価・QOL評価を用い, そのスコアを算出した. 検査時期を, ①初診時と, ②新義歯装着直前の旧義歯使用時 (旧義歯調整後, 以後, 直前と略す) の2時期とし, 両時期間での評価の変化を検討した. 各評価のスコアは2時期間において様々な変化が見られた. とくに満足度評価は, 経時的に上昇した (p<0.05). しかしながら, 一部の患者では低下した場合もあった. 総義歯評価・咀嚼機能評価・満足度評価では,「 初診時のスコア」と「初診時から直前のスコアの変動(差)」間に有意な負の相関が認められ (p<0.01), 初診時の評価が低いほど直前でのスコアが大きく上昇することが示された. したがって, 状態の悪い旧義歯ほど, その状態が改善しやすい傾向があると考えられた. 術者評価と患者評価には各時期の評価, 評価の変動のどちらにも有意な関連性が認められなかった. 旧義歯の調整により, 満足度が上昇したが, 中には評価が低下する場合もあり, 術者評価ではとらえきれない患者評価の低下が示された. したがって, 旧義歯の調整においては, 術者の評価だけで判断せず, 患者の評価を調整に反映する重要性が示唆された.
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