心筋症患者のパワーレスネスに関する検討
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概要
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本研究の目的は,心筋症患者のパワーレスネス(結果に対して自分自身の行動が重要な影響を与えないという知覚.現実の状況や直後に起こる出来事をコントロールできないという思い込み)について検討することである.研究は質的帰納的研究デザインとし,研究参加者は男性26名,女性4名の計30名,平均年齢54.4±2.06(SE)歳であった.参加者への面接は半構成的面接とし,面接内容はKrippendorffの内容分析の方法を参考にして分析を行った.分析の結果,心筋症患者のパワーレスネスの感覚は【先行き不明の困惑】【十字架を背負う自覚】【災難にみまわれる感覚】【見込みのない願い】【命が消えてゆく感覚】という5つのカテゴリーに分類された.参加者は心筋症の診断を受けたあと,徐々に病気を受け止めていく一方で"本当に病気なのか? 自分はどうなっていくのか?"という疑問を抱きつつ病気を自覚していく.病気であること,そして病気による災難を意識し,周囲に及ぼす影響に対して罪の意識をもち自分を責めることさえする.参加者は,見込みのない将来に対して"生きたい,助かりたい"という叶わぬ願望をもちながらも自らの命のはかなさを認識していた.これらのカテゴリーに表された参加者の感覚は"自分の力だけではどうにもならない"という参加者自身の力量不足,つまり自身の力や生命に対して調整することが困難だという感覚であることが確認された.今後はパワーレスネスの感覚を抱きながらも日常生活を送っている患者の対処行動を明らかにして,心筋症患者のパワーレスネスとコーピングの全体構造を検討することにより,患者への更なる看護の方向性を見出していく必要があると考える.
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公益社団法人 日本看護科学学会 | 論文
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