卒前臨床実習における心臓病患者シミュレータを用いた診察実習
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概要
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心臓病患者シミュレータは全国の医学教育機関で最も普及している医療シミュレータの一つであるが,学習到達目標を明確にした上での有効な活用方法は十分検討されていない.本研究では,共用試験OSCE後の医学生に対する明確な到達目標の設定とシミュレータ演習を取り入れた学習方法を提案し,その教育効果についても検討した.1)対象は本学医学科5年生94名で,到達目標は順序立てた診察技能の習得と正常心音および代表的心疾患の判別とし,講義とシミュレータ演習の前後でチェックリストを用いた評価を行った.2)実習前後で,総スコア(14点満点)は2.2±0.9点から11.4±1.5点へ有意に上昇した(p<0.001).心疾患の病態の違いによる実習後スコアの差は見られなかった.3)実習前に対象者の50%以上が実施できた項目は,聴診器の正確な当て方と心雑音の最強点の指摘のみであったが,実習後は対象者の98%が診察所見を順序立てて述べられ,94%が設定された心疾患の病態を的確に推測できた.4)到達目標を絞ったシミュレータ演習は,限られた時間と人的資源で診察技能の向上に寄与しうる.今後は,実習後の定着度の再評価や反復学習プログラムの確立が課題である.
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