子宮頸部の最小偏倚腺癌(いわゆる悪性腺腫)の1例
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概要
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背景 : 子宮頸部のいわゆる悪性腺腫は最小偏倚腺癌とみなされ, その腫瘍細胞の異型の軽さから細胞診で悪性と診断することが困難とされている. 私どもは興味ある細胞像を示した 1 例を経験したので報告する.症例 : 29 歳女性. 2 年前からみられた帯下がさらに増量し, 子宮頸部擦過細胞診にて悪性腺腫が疑われたため, 広汎子宮全摘術が施行された. 擦過細胞標本には大小多数の結合性の良い細胞集塊が出現し, 2 型に区別された. 一つ (細胞集塊 A) は, 大部分を占めるもので, 異型の軽い豊富な粘液を有する円柱細胞のシートから成っていた. ほか (細胞集塊 B) は, 少数であるが, 異型の明らかな粘液のない腺細胞から成っていた. 細胞集塊 B の細胞は核の腫大とクロマチン増量, N/C 比の増大, 明瞭な核小体を示し, ところにより好中球の侵入を伴った. 摘出子宮の頸部は著しく肥大し, 組織学的に異常腺管の massive な増殖が認められた. 増殖の中心部では小葉構造がなく, 腺管が分岐を繰り返して増量拡大し, その細胞は異型性が軽度で豊富な胃型粘液を産生していた. これに対し, 増殖の先進部は粘液産生に乏しく異型の目立つ腺細胞が出現し, 間質浸潤を示していた. 細胞標本に認められた細胞集塊 A および B は, それぞれ腫瘍の中心部と辺縁部の変化に由来していると見なされた.結論 : 明らかな異型を示す悪性細胞は腫瘍の先進浸潤部に由来すると見なされた. 最小偏倚腺癌の細胞診断では, 多くの異型の軽い粘液産生細胞の中に, 比較的少数の悪性細胞を見出すことが鍵となる. また, 正しい診断を得るためには適切なサンプリングが大切である.
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特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会 | 論文
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