カーネーションと芳香性ナデシコ属野生種の種間交雑種の花から発散される香気成分の解析
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概要
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現在のカーネーション(Dianthus caryophyllus L.)園芸品種の多くは微香性で,その香りは主に安息香酸メチルで占められている.強いあるいは特徴的な芳香を有するナデシコ属野生種は,カーネーションの芳香性向上に有用な遺伝資源の可能性がある.われわれは,カーネーションと芳香性野生種の種間交雑系統の花の香りをガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)を用いて調査し,芳香性カーネーション育種における野生種の有用性を評価した.多様な芳香族化合物を持つ D. hungaricus と安息香酸メチルが香気成分を独占的に占めるカーネーションを交雑したが,その種間雑種には,芳香族化合物の多様性は獲得されていなかった.また,われわれは,香気成分の多様性が乏しいカーネーション園芸品種と芳香性野生種の種間交雑によって得られた既存の雑種系統を解析した.カワラナデシコ(D. superbus var. longicalycinus)は,β-オシメンや β-カリオフィレンを豊富に有していた.これらのテルペノイドは,本野生種とテルペノイドを欠いたカーネーション系統との種間交雑種において,主要な香気成分として獲得されていた.3 種類の未同定の野生種(Dianthus sp. 4,5 および 6)は,オイゲノール,ベンジルアルコール,o-アニス酸メチル,サリチル酸メチルを含む多様な芳香族化合物を豊富に有していた.これらの芳香族化合物は,カーネーションと野生種の種間交雑種においても認められ,その量は,親系統のカーネーションよりも増加していた.ナデシコ属野生種の香気成分発散能はほとんどの交雑種に遺伝しており,化合物の種類や量は親系統のカーネーションより増加する傾向にあったたものの,特定の遺伝様式は見出せなかった.いくつかの交雑種の花からは遺伝した化合物に由来する香りが感じられ,種間交雑の効果が確認された.カワラナデシコや Dianthus sp. 4,5 および 6 は,カーネーションにテルペノイドや多様な芳香族化合物を導入するために有望な交雑相手であると考えられる.
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