銅の大気腐食における塩基性硫酸銅及び塩化物の生成
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概要
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屋外における銅の大気腐食において亜酸化銅と共に塩基性硫酸銅や塩化銅が生成することは良く知られている.塩基性硫酸銅の中でもposnjakiteは初期段階で生成し,暴露期間が長くなるとbrochantiteに変化していくことが報告されている.一方でatacamiteやnantokiteなどの塩化銅は初期段階では生成しないことが報告されている.今回,上記の塩基性硫酸銅や塩化銅が析出する条件を298 Kにおける熱力学データを用いて計算した.Posnjakiteの析出が起こる硫酸イオン濃度の最低値は,2価の銅イオン濃度が1×10-6 M,pHが7のとき,6.3×10-4 Mと算出された.都市部で夏季に暴露した銅板上へのposnjakiteの生成は表面水膜中の硫酸イオン濃度が相の析出に至る硫酸イオン濃度を超えることで合理的に説明できる.計算の結果,都市部の冬季においても表面水膜中の硫酸イオン濃度はposnjakiteが析出する硫酸イオン濃度の最低値を超えていることが判明した.冬季においてposnjakiteが生成しない理由として,相対湿度が低いこと及び濡れ時間が短いことが考えられた.Atacamiteの析出が起こる塩化物イオン濃度の最低値は,2価の銅イオン濃度が1×10-6 M,pHが7のとき,2.5×10-2 Mと算出された.表面水膜中の塩化物イオン濃度はatacamiteが析出する塩化物イオン濃度の最低値を超えていることが計算結果から判明したが,atacamiteは夏季,冬季いずれにおいても生成しない.一つの要因として,atacamiteの生成速度が遅いことが考えられる.また,posnjakiteとatacamiteとの相互の反応を考慮すると,都市部に暴露した銅板の表面水膜中の硫酸及び塩化物イオン濃度においてはposnjakiteの析出が支配的であり,それは特に冬季で顕著であった.このことが都市部に暴露した銅の大気腐食の初期段階においてatacamiteが生成しない要因であると考えられた.
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