2波長レーザーによる象牙質照射後における歯髄の病理組織学的変化
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概要
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最近,一つのレーザー機器から異なる二つの波長2.94μmと1.67μmを同時に照射できる2波長レーザー装置が軟組織および硬組織の蒸散用に開発された.本研究では,このレーザーを象牙質切削に応用した際の基礎的実験として,レーザー照射後における歯髄反応を調べた.本研究に用いた被験歯は,成犬3頭から得られた計42歯である.これらの成犬に対し全身麻酔を施した後,エアータービンハンドピースにて象牙質内まで窩洞形成を行なった.その後,試作2波長レーザー発振装置を用いて,注水下のもと,30秒間レーザーを象牙質に照射した.照射条件を2.94μm(以下3μm帯と略す)と1.67μm(以下2μm帯と略す)の混合比率を変化させ,条件を設定した.すなわち,1. 3μm帯単独群(1W,40Hz) 2. 2μm帯単独群(1W,40Hz)3. 3μm(50%)-2μm(50%)帯混合群(1W, 40Hz)4. 3μm(100%)-2μm(100%)帯混合最大出力群(2W40Hz)を実験群とし,対照群をエアータービンのみによる切削の 5. タービン群とした.その後,グラスアイオノマーセメントを填塞した.観察期間は術直後,7日および28日間とし期間経過後,歯髄変化の実験病理組織学的検討を行った.3μm帯を含む照射条件では,象牙質の効率的な切削が得られたが,2μm帯では,全く象牙質の切削は得られなかった.また,全ての症例で,充血などの軽度な症状はみられたが,歯髄に対する重篤な損傷は全くみられず,良好な病理組織像を示した.したがって,本2波長レーザーは,特に3μm帯を含む条件では,効果的な象牙質の切削が得られ,また歯髄に対して安全であることが示唆された.
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特定非営利活動法人 日本レーザー医学会 | 論文
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