進行癌,大腸癌に対するPDTの挑戦
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概要
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光線力学的療法(PDT)は,早期の消化管癌に対する効果的で非侵襲的な治療法である.またPDTは,進行癌に対する姑息的治療としても役にたつ.しかし,進行胃癌や進行直腸癌を根治させる治療法としては,まだ研究段階である.<BR>筆者らは1988年から金蒸気レーザー(GVL:gold vapor laser)を用いたPDTを消化管の早期癌のみならず進行癌に対しても行ってきた.1993年からは,エキシマダイレーザー(EDL:excimer-dye laser)を用いたPDTを続けている.GVLもEDLもともにパルス波のレーザーであり,それらを用いたPDTの治療効果はアルゴンダイレーザーなど他の連続波のレーザーを用いた場合よりも優れている.筆者らは,パルス波のレーザーによるPDTを中心とする内視鏡的集学的治療(endoscopic combined therapy)を考案し,この新しい治療法によって進行胃癌および進行直腸癌を根治させることに成功した.<BR>その概略は,以下の通りである.1)エピネフリン加生食を局注したのち,腫瘍縮小の目的で腫瘍を大まかに高周波で切除する.2)患者にヘマトポルフィリンなどの腫瘍親和性光感受性物質を静脈注射したのち,残った腫瘍に対してパルス波レーザーを可能な限り照射する.<BR>外科手術症例の病理組織学的検討の結果,直径4cm未満のT2(癌が固有筋層まで浸潤)の胃癌における約70%,直径4cm未満のT2の直腸癌では80%以上においてリンパ節転移を認めなかった.つまり,4cm未満の筋層まで浸潤する進行癌はリンパ節転移が少ない.<BR>以上より,PDTを用いた内視鏡治療によって進行胃癌や進行直腸癌を根治させるという挑戦は,夢ではなく現実的であると言えよう.
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特定非営利活動法人 日本レーザー医学会 | 論文
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