高齢者の陳旧性顎関節脱臼に対する非観血的整復法の一例
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概要
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陳旧性顎関節脱臼に対する徒手整復は, 新鮮例に比べ困難であり, 全身麻酔下において筋弛緩剤を併用しても不可能な事が多く, 観血的に整復される事が多い。今回我々は, 高齢者で非定型精神病の患者に対し, 挺子作用を応用した弾性ゴム牽引法により, 非観血的に下顎頭位を整復, 顎機能を回復し, 良好な結果を得た一例を経験したので報告する。患者は65歳女性で, 幻覚妄想状態 (非定型精神病) で入院中に両側顎関節脱臼をおこし, 退院後, 咬合不全, 閉口障害のため当科来院した。初診時下顎が前下方に突出し, 咬合は両側臼歯部のみの一点接触で, 開咬状態を呈し, エックス線写真では明らかに両側下顎頭の前方脱臼を認めた。処置として, 全身麻酔下にて筋弛緩剤を併用し徒手整復を試みるも整復不可能なため, 下顎に両側大臼歯部を支点としたレジンプレートを装着し, 挺子作用を期待し前歯部にゴム牽引を行った。約2日で下顎頭は両側関節結節の直下付近まで移動し, 3日目よりIII級ゴムに切替え後方移動させた。ゴム牽引後12日目には, ほぼ咬合も改善したため開口訓練を開始し, 24日目には保定を終了した。約2ヵ月後, 開口量31mmとなり顎関節部に症状もなく, 経過良好である。陳旧性顎関節脱臼は, 本例のように非定型精神病等の特殊な疾患を有した高齢者が受傷する可能性の高い疾患である。このたあ肉体的にも精神的にも比較的ダメージの多い観血療法を考える前に, 非観血的療法を一考するべきであると考える。
- 一般社団法人 日本老年歯科医学会の論文
一般社団法人 日本老年歯科医学会 | 論文
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