重度の痴呆を有する口腔癌の1例
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概要
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重度の痴呆を有する患者は疾病に対する理解力に乏しく, 治療時に協力を得ることは困難である。この様な症例に対してどの様に対処すべきか苦慮することがある。今回われわれは, 重度の痴呆を有する口腔癌症例を経験したので, その概要を報告する。<BR>患者は73歳の男性。左側下顎小臼歯部における歯肉癌 (扁平上皮癌) で, T<SUB>2</SUB>N<SUB>0</SUB>M<SUB>0</SUB>であった。正常圧水頭症, 前頭葉型痴呆症等の合併症があり, 著しい人格の形骸化が認められた。診察には拒否的で暴力行為が見られたため, 精神科医の管理のもと, flunitrazepamによる鎮静下に, 検査, 放射線治療等を行った。リニアックで54Gy照射し, 腫瘍はほぼ消失した。その後, tegafur・urasilの投与を行っていたが, 他因死した。死因は追求出来なかった。<BR>患者の理解が得られず治療が困難な症例では, 家族の精神面のケアと言う観点からも, 家族と充分なコミュニケーションを図ったうえで, 治療を行う事が望ましい。本症例は, 外科療法が適応であったが, 家族とも相談のうえ, 患者のQOLを考慮して, 放射線療法を主体にした治療法を選択した。また, 本症例の意識レベルのコントロールにはflunitrazepamの点滴による鎮静法が有効であった。重度の痴呆患者の治療には様々な問題が含まれているので, 家族および各科の専門医, 各部門のケアギバーと緊密な連絡をとりながら, 多角的な視野にたって治療計画を進めていくことが重要である。
- 一般社団法人 日本老年歯科医学会の論文
一般社団法人 日本老年歯科医学会 | 論文
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