全国高齢者における咀嚼能力の機能歯三角マップによる検討
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概要
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高齢者のみならず, 私たちの咀嚼能力は現在歯の数やその機能に依存しており, 自分の歯の数が多いほど咀嚼能力が高い。しかし, 一方で多くの高齢者は, 義歯などの補綴物による人工の歯の力を借りることにより, 喪失した咀嚼機能を維持回復して日々の生活を営んでいるという実情もある。本研究は, 機能歯三角マップを応用して, 現在歯数ばかりでなく補綴歯数も考慮に入れた機能歯数と咀嚼能力との関係を検討することを目的とした。<BR>資料は, 日本大学総合学術情報センターの縦断研究プロジェクトによる全国訪問聞き取り調査の結果を用いた。今回分析に供したサンプル数は4, 049名であり, 性, 咀嚼能力別に機能歯三角マップ上に個人を布置しその分布を調べた。<BR>その結果, 咀嚼能力の高い咀嚼能力5の群では, 現在歯数20本以上が, 男性で41.2%, 女性で33.2%であった。これとは別に総義歯を含めた機能歯数25本以上の高齢者は, 男性で53.3%, 女性で62.2%と高い割合を示しており, 総義歯装着などの補綴処置が咀嚼能力回復に確実に貢献していることを実証的に示した。<BR>咀嚼能力が低下するにつれ, 現在歯数の多い者の割合は減少していた。特に十分な咀嚼能力が得られない咀嚼能力1は, 人数にして1割未満であるが, 義歯装着などにより歯の本数はほぼ回復されていたものの, 十分な機能回復はなされていなかった。女性の方が男性に比べ相対的に咀噛能力の低い者の割合が高かったので咀嚼筋力の関連もあろうが, 現在使用中の義歯の質が向上すれば, さらに多くの高齢者の咀嚼能力回復が期待できよう。
- 一般社団法人 日本老年歯科医学会の論文
一般社団法人 日本老年歯科医学会 | 論文
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