慢性関節リウマチ患者にみられた習慣性顎関節脱臼の1例
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
慢性関節リウマチ (RA) は多発性関節炎を主症状とする進行性病変で, 中年以降の女性に多い.顎関節では運動痛や雑音, 顎関節強直症の症状がみられる.今回われわれは, RA患者の歯科治療中に生じた習慣性顎関節脱臼の1例を経験したので, その成因について検討した.<BR>症例は74歳男性.6う歯を主訴に老人保健施設より当科へ紹介来院した.3年前にRAを指摘され, 現在の障害度はClass III, 進行度はStage IVで内科, 整形外科で治療中である.投薬は抗リウマチ剤, ステロイド剤, 鎮痛剤などである.2年前に右側顎関節脱臼するも自力で整復した.今回, う歯, 歯周炎や義歯不適合を認めたため, 一口腔単位の歯科治療を開始した.顎関節症状として, 右側顎関節に雑音および疹痛を認め, 最大開口量は25mmであった.画像診断では関節頭のびらんおよび扁平化がみられた.通院困難なため, 入院下で抜歯8本, 保存治療3本, 上顎総義歯, 下顎局部床義歯を作製した.入院治療時に, 頻回に右側顎関節脱臼を生じるようになり, 一時的に自力による整復が困難となり徒手整復を要した.開口制限の指示とともに補綴治療終了後は顎関節脱臼の回数も減少し, 現在は全く認めていない.<BR>RA患者に習慣性顎関節脱臼を有するのはまれである.本症例は, 歯科治療時の最大開口維持や口腔内の疹痛, 抜歯後の咬合高径の低下による低位咬合などが原因で, 外側翼突筋のスパズムが顎関節脱臼の引き金になったと推測された.
- 一般社団法人 日本老年歯科医学会の論文
一般社団法人 日本老年歯科医学会 | 論文
- 要介護高齢者における義歯補綴治療と呼吸・循環動態
- 加齢, 栄養, 飼育飼料形態および咬合支持が高週齢ラットの全身持久性と下顎骨および大腿骨骨塩量に及ぼす影響
- Dental visiting treatment of bedridden aged in Yokohama city. The satisfactory results and the future view.:The satisfactory results and the future view
- 各種義歯洗浄剤のバイオフィルム形成Candida albicansに対する除去効果
- 重度の痴呆を有する口腔癌の1例