軟食性食飼料飼育における老齢ラット咀嚼筋への影響
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概要
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現在, 我々の食生活は軟食化の傾向にあるといわれている。特に, 成長期に軟食を摂取し続けた場合, 歯牙・顎骨を含めた口腔の成長発育と, 生体機能への影響が示唆されている。しかし, 硬食を摂取していたが, 加齢に伴う口腔機能の低下により軟食の摂取を余儀なくされた高齢者の顎骨および咀嚼筋に対する退行性変化を検討した研究報告は見られない。本研究は, 成長発育終了後, 軟食を摂取した結果, 咀嚼筋にどの様な影響をおよぼすかを検索した。<BR>実験動物はWistar系雄性ラットを用いた。成長発育の終わる4ヵ月齢まで固形飼料で飼育し, その後, 同成分の粉末飼料を自由に摂取させ, 21ヵ月齢30ヵ月齢まで飼育したものを実験群とした。対照群は, 同月齢まで固形飼料のみ摂取させたものを用いた。これらより咬筋の浅層・深層と側頭筋を採取しActomyosin ATP ase染色を行い, 平均筋線維構成率, 平均筋線維面積率, 平均筋線維直径 (短経) を計測し, これを検討した。今回検討を行った咬筋の浅層・深層と側頭筋ではタイプ1線維は認められなかった。タイプ2A・2B線維は解糖系酵素の活性が高く, 無酸素状態でのATP合成が優れており, 特にタイプ2A線維では酸化酵素活性が高く, 疲労抵抗性もあり持久性に優れている。<BR> (1) 2A線維構成率は咬筋浅層では実験群対照群ともに減少し, 咬筋深層の対照群で増加した。面積率では咬筋浅層の実験群で減少した。<BR> (2) 2A・2B線維の直径は対照群で経時的に減少し, 特に咬筋深層で著明に認められた。<BR> (3) 月齢間の比較では21ヵ月で実験群と対照群に有意な差が認められた。一方, 30ヵ月ではその差は減少していた。<BR>以上の結果より固形飼料摂取という咀嚼環境が少なからず咬合力の維持に関与していることが示唆されるとともに, ある一定の年齢以降は加齢変化による退行性変化が主体となることが示唆された。
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一般社団法人 日本老年歯科医学会 | 論文
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