小学校における系統的物質学習の実践的研究:―粒子概念を「状態変化」で導入し「溶解」で活用する授業―
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概要
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本研究の目的は, 小学校段階の粒子概念に関わる授業について, 物質の異なる現象を通して粒子概念の導入から活用にいたる一連の授業実践を行い, 粒子概念を用いた系統的な物質学習の可能性を示すことである。本研究では, 粒子概念を4年の「水と水蒸気」(対象児童 3クラス, 105名)で初めて導入した。その後, 5年の「もののとけ方」(対象児童 1 クラス, 35 名)で粒子概念を活用する授業実践を行った。本研究の授業では, 1 つの授業の内容は欲張らずに単純にし, 科学的に正しい粒子モデルで課題を解決して終わることを心がけた。これにより小学校段階における粒子概念の授業で, 獲得した知識をその後の授業場面で有効に活用できるかを検討した。本論文では, はじめに初めて粒子概念を導入する場面として「水と水蒸気」を選んだ理由を述べた。次に, 実践結果について報告した。教師側から供与した知識は, 「物質はすべて目に見えない小さな粒でできてる」と「粒の大きさは変わらない」だけである。子ども達はこれを手掛かりに, 「なぜ水は目に見えて, 水蒸気は見えないのか?」を, 科学的に正しい粒子モデルで解決した。翌年, ここで学習した内容を活用し溶解後の溶質の均一性について学習した。「もののとけ方」の授業後の確認テストの結果は, 溶解による質量保存の問題(正答率97%)および溶解後の溶質の均一性の問題(正答率100%)ともに正答率が高かった。また溶液の粒子モデルによる作図と説明文においても97%の子どもが, 溶質の均一性について粒子モデルによる溶解イメージを形成することができており, 学習内容の理解度は高いと評価できる。よって小学校段階においても, 異なる学習内容を通して粒子概念を適応し系統的に積み上げていく物質学習の可能性が示された。
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