紀伊半島西部,四万十帯北帯におけるアンバーとマンガン鉱床の堆積環境と希土類資源
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概要
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本研究では紀伊半島西部,四万十帯北帯の玄武岩及び玄武岩質凝灰岩に伴って産するアンバー(鉄マンガン堆積物)及びマンガン鉱床の調査と化学組成分析を行い,伊藤川・三十井川・臼ヶ岡山・小森谷・竜神の 5 地区における希土類元素(REE)の資源としての検討を行った.伊藤川地区に分布するアンバーは玄武岩と黒色頁岩の境界部に胚胎する,層厚約 4 m,走向方向へ約 80 m 伸長したレンズ状岩体である.一方,竜神地区に分布するマンガン鉱床は玄武岩と赤色頁岩の境界部に胚胎する層状岩体で,低品位部では部分的にマンガン脈による鉱染を受けている.また厚さ数~数 10 cmの鉄とマンガンに比較的富む堆積物(アンバー様堆積物)が三十井川・臼ヶ岡山両地区においても認められた. 伊藤川・三十井川・竜神の各地区から採取された玄武岩はほぼ平坦または軽希土類元素にやや枯渇したコンドライト規格化 REE パターンをもち,Zr などの枯渇は認められなかった.これら玄武岩の微量元素及びREE 組成の特徴から,玄武岩は中央海嶺玄武岩 (MORB)を起源とすると考えられる.アンバーのPAAS(post-Archean average shale)規格化 REE パターンは Ce を除いて平坦なパターンを示し,顕著なCe 負異常を持つ.またマンガン鉱石は Eu 正異常を持つ平坦な PAAS 規格化 REE パターンを持つ.玄武岩組成や,アンバーとマンガン鉱石の微量元素組成や現世海洋堆積物との組成比較などからアンバー及びマンガン鉱床は中央海嶺近傍における熱水活動に伴って生成されたと考えられる. 伊藤川地区のアンバーからは最大 1,441 ppm の総希土類含有量(ΣREE)が確認された.他方マンガン鉱石のΣREE は 100 ppm 以下であった.一部のアンバー様堆積物には 200 ppm 前後のやや高いΣREE が認められた.本調査域の MORB 起源の玄武岩に伴うアンバーには,重希土類鉱床として稼行されている中国南部のイオン吸着型鉱床に匹敵する REE が含有される.本調査域の岩体規模は小さく資源としての価値は低いものの,今後は他地域において同様の玄武岩に伴う鉄マンガンに富む堆積物の資源調査が望まれる.
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National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, Geological Survey of Japan | 論文
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