トリアリルイソシアヌレートの特異的架橋重合と生成架橋樹脂の脆性:網目構造形成過程の追究から発想した "架橋システム材料" の構築
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概要
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トリアリルイソシヌレート (TAIC) のラジカル架橋重合挙動は通常の多官能アリルモノマーに比して特異的であった。これは側鎖置換基のかさ高さのため成長鎖末端での立体的な込み合いが大きいことによるものであり, 逆に成長鎖末端での反応の遷移状態形成に際しての立体効果を活用することによってモノマー連鎖移動反応, 環化重合性, さらには共重合反応性比の制御が可能となった。一方, TAIC硬化物は実用的価値のない非常に脆いものであった。通常, 架橋樹脂の脆性はコロイド粒子からなる網目構造の不均質性と相関すると考えられており, 反応論の見地からすると分子内架橋反応の局所的かつ高度の生起がミクロゲル化の必須要件となるが, TAIC樹脂の一次ポリマー鎖は側鎖置換基のかさ高さのため剛直となり, ミクロゲル形成の要件を満たし得ない。そこで, TAIC樹脂の網目構造と脆性の相関が架橋樹脂前駆体 (NPP) の精細なキャラクタリゼーションから考察された。すなわち, TAIC樹脂の脆性はTAIC-NPPのコアーシェル型デンドリティック構造と関連し, そのNPPのシェル部にある剛直な一次ポリマー鎖中のペンダントアリル基と立体的に込み合った成長鎖末端ラジカルの分子間架橋反応の生起が不十分であることによると推察した。延いては, TAIC樹脂の極端ともいえる脆さから発想して粉砕による微粒子化を考えるようになり, 敷衍して, 広く架橋樹脂を無限に広がった巨大な一分子として考えるよりも, 準安定中間体ともいえるNPPをモジュールとする "架橋システム材料" として捉えるべきであることを提唱した。
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