クロストリジアと免疫
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
消化管は常にあらゆる微生物侵入の危険にさらされている.そのため,消化管は強い活性を持つ免疫細胞から構成される頑強な免疫システムを備えている.一方で,消化管免疫システムは,日常的に接する無害な食物抗原や腸内常在細菌に対しては,不必要に免疫応答しないよう制御されている必要がある.この活性化と抑制がどのようにして制御されているのか,その詳細なメカニズムは明らかになっていない.近年,ノトバイオート技術と最新の免疫学を組み合わせて解析することによって,個々の腸内常在細菌種の消化管免疫系の活性化と抑制双方における役割が徐々に明らかになってきている.中でもクロストリジア網(Clostridia class)に属する細菌種が,消化管免疫系に深く影響を与えることが明らかとなってきている.特に制御性T細胞(Treg細胞)とよばれる免疫抑制に特化した細胞の数を増やし,その機能を高める細菌種が,クロストリジアクラスターIV・XIVaに含まれることがわかっている.また一方で,クロストリジアに属すると考えられるセグメント細菌(segmented filamentous bacteria,SFB)が,Th17細胞とよばれるエフェクターT細胞を強力に誘導することも明らかとなっている.本稿では,腸内細菌の構成異常と疾患との関連,腸内細菌に影響を受けて構築されるユニークな消化管免疫システムの概略,そしてクロストリジアに属する細菌による免疫細胞活性化誘導機構について紹介する.